プログラミングにはどんな可能性があるか?AR(拡張現実)など様々な技術を組み合わせた表現で世界的な注目を集めるライゾマティクスリサーチ真鍋大度氏。これまでの取り組みやパソコンに触れるきっかけなどについて話を聞いた。

協力/インテル

プログラミングとエンターテインメントの融合

 2016年8月のリオデジャネイロでのオリンピックの閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーで、オリンピックスタジアム全体を舞台にCGと現実が融合するAR技術を駆使したビジュアル表現を全世界に発信した立役者が、ライゾマティクスの真鍋大度氏だ。

真鍋大度(まなべ・だいと)。株式会社ライゾマティクス取締役。メディアアーティスト、DJ、プログラマー。1976年東京生まれ。東京理科大学卒業後、大手企業にシステムエンジニアとして入社。2006年に同社を設立し現在に至る
真鍋大度(まなべ・だいと)。株式会社ライゾマティクス取締役。メディアアーティスト、DJ、プログラマー。1976年東京生まれ。東京理科大学卒業後、大手企業にシステムエンジニアとして入社。2006年に同社を設立し現在に至る

 インタラクションデザイナー、プログラマー、DJ・・・ライブやテレビの生放送の演出技術開発、アート作品の展示など、自らアーティストとして、そしてディレクターとして携わり、またブレーメン芸術大学客員教授、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授をはじめ、世界中の大学やSonar Festival Barcelonaなどのイベントでの講義活動も取り組んでいる。

 真鍋氏は大学卒業後、システムエンジニアの経験を経て、ITベンチャーに転職。その後、プログラミングを駆使した表現などを学ぶためIAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)に進学した。

 「正直に言えば、20代の頃は今のように作品を作って生活ができるとは思ってもみませんでした。大学講師やシステム開発の仕事をやりながら、その傍らで作品制作をする日々でした。それが広告や企業のショールームの展示、ファッションショーの演出などに使いたいといった要望が少しづつ増えてきて、それで会社をつくることにしたんです」(同社取締役 真鍋大度氏、以下同じ)

 2006年、大学や専門学校時代の同級生とともにライゾマティクスを立ち上げたが、当時はまだファッションやデザインとプログラミングを組み合わせた映像表現などは一部の人にしか知られていなかったという。転機は、2010年に初めてPerfumeのライブにおいて画像解析技術など様々な技術を駆使した演出を手掛けたことだった。

 「業界の人たちしか知らなかったものが、一般の人にもこういう表現があるのだと広く認知してもらえるようになりました。海外のメジャーの音楽アーティストでもやっている人は少なかったけれど、当時既に世界的なエンジニアたちとも一緒に仕事をしていたので、自分でアイディアを出してプロジェクトが作れるようになればもっと面白いことが出来るようになるはずだと思ってました」

 真鍋氏の予感は的中し、これまでに数多くのアーティストを手掛け、この世界で押しも押されもせぬ第一人者となった。

イギリス・マンチェスターで開催された「Bluedot Festival」で、ロヴェル電波望遠鏡を舞台に、オーディオ・ビジュアルのインスタレーションを作り上げた。真鍋氏らによる、様々なものと、プログラミングの融合によって1つの作品の魅力をさらに引き立たせることができるのだ
イギリス・マンチェスターで開催された「Bluedot Festival」で、ロヴェル電波望遠鏡を舞台に、オーディオ・ビジュアルのインスタレーションを作り上げた。真鍋氏らによる、様々なものと、プログラミングの融合によって1つの作品の魅力をさらに引き立たせることができるのだ

ブラックボックスの中身を知るか否か

 真鍋氏がパソコンに初めて触れたのは小学生の頃。当時はようやく普及型のパソコンが登場した時代で、電化製品好きな父親が購入したものだった。

 「パソコンに触るきっかけは、ゲームですね。ゲームをやっているうちに自分で作りたくなってきたんです。小学生の頃は秋葉原にも通っていて、雑誌を手に入れると、プログラムを書けばゲームができるとあった。写経みたいなもので、雑誌を見ながら一生懸命コピーして、シューティングゲームやロールプレイングゲームを作って無理やり友達にやらせてました(笑)」

 中学、高校ではアーケードゲーム、音楽、スケボーなどに夢中だったという真鍋氏だが、この時代から興味を抱いたものは、自ずと今につながっていく。大学へ進学した頃、世はまさにインターネット黎明期で、自分たちでウェブサイトを作ることが可能になっていた。

 「大学に入った頃からパソコンを使って音楽を作るようになりました。パソコンによってハードルが下がり、誰もが音楽制作をできるようになった。ただ、それはいい面も、悪い面もあると思うんです」と真鍋氏は話す。

 基礎を学ぶことなく、便利なツールだけを使って映像や曲を作るような現在の風潮には、違和感を感じているという。「年々、コンピューターのリソースも増えていて、できることはどんどん複雑化しています。その結果ブラックボックスがどんどん大きくなっている。なぜそうなっているのか、を分からないままにいろんなことができるのは決して悪いことではないと思いますが、それでは作れるものに限界があります」

 大学での講義やセミナーでの講演など、人に情報を伝える場を積み重ねるにつけ、そういった思いを強くしてきた。ある限られた範囲においては、用意されたツールを使いこなせばいいが、それでは本当の意味で新しいものを創造することは難しい。

 「僕の強みは、小さな頃から音楽に触れていたこと、そして大学の頃に数学をやっていたこと。特にピュアマス(純粋数学)を研究していたので、論文に出てくる様な数式に対する拒否反応がないかもしれません。より本質的な深い話をするときには、基礎的なことが分かってないとこれ以上踏み込めない、数学なしには説明できない場面がどうしても出てきます。新しい表現をどうやって作り出すのかといえば、ツールを作る側の知識も必要になってくる。もちろんどれくらいの研究者や表現者になるのかにもよりますが、ブラックボックスの中身を分かって取り組むのと、まったく分からないのとではできることがだいぶ違ってくると思うのです」

 小学生の頃に芽生えたプログラミングへの興味が今に生きているという。

【PR】パソコンは本当にやりたいことを加速させるツール(画像)

パソコンの可能性を多くの人は知らない

 総務省の「平成29年版 情報通信白書」によると、2011年からの5年間でスマートフォンの世帯保有率は4倍以上に上昇。個人保有率もうなぎのぼりで13〜19歳が81.4%、20代が94.2%、30代は90.4%にも及んでいる。一方でパソコンの世帯保有率は73%と近年減少傾向にある。

 「今の時代って情報過多で、小さな子どもがスマートフォンで延々と動画を見ている姿に、それは本当に大丈夫なのかなと心配になります。スマートフォンだけでなく、タブレットやパソコンも同様ですが、ただ流れてくる情報を思考停止をして受信するだけのテレビのようなものになっている。そこは問題だなという気がします」

 スマートフォンがそもそも電話であるように、パソコンはもともとコンピューターである。情報を受信するものではなく、自ら情報を入力して、カタチを変えてアウトプットしていく。クリエイティブなツールであることが、本来的な機能といえるはずだ。

 「うちにはたまたま父親のパソコンがあって、ゲームを作りたくてゲームブックから始めて、飽き足らなくなってパソコンを触り始めた。そこでプログラミングやアルゴリズムといった20年たっても変わらない普遍的なコンセプトに触れたことが今に生きています。パソコンにしかできないことがあって、それを使うことでいろいろなことができた」

 真鍋氏のような自らの意志でパソコンを使うことを選ぶ子どももいれば、もちろんそうでない子どもたちもいる。かつてスポーツ好きな子どもとパソコン好きな子どもは、全く別のものと捉えられてきた。しかし、最近のスポーツ中継を見れば分かるように野球もサッカーもテニスもゴルフも、戦術やデータ分析は当たり前で、CGやグラフなどさまざまなビジュアル表現がテレビ放送に活用されることも一般的になっている。今の子どもたちがその両方に興味を抱いたとしても何ら不思議はないが、どのように子どもたちを導いてあげればいいのか。

 「本当は何をやりたいのかを一緒に考えることが大事で、それを加速させるものとしてパソコンをうまく使えるといいと思うんです。今の時代にはそういうものがたくさんある。パソコンができることってすごくたくさんあって、ただそれを知らない人が大多数なのです。後はツールの使い方を教えるだけではダメ。僕も中学生に教えたりする機会もありますが、例えばワークショップで“検索”の仕組みを考えてみる。そのときはあえてパソコンを使わずに写真だけを使って、どう情報を整理すれば一番効率がいいのか、メタデータやタグ付け、グループ化とは何かを考え進めていくんです。またプライバシーと広告の話など身の回りの環境についても教えます。フェイスブックは何を得て自分たちは何を与えているのかを俯瞰してみる。そういうリテラシーを得ることや上位概念を知ることがすごく大事だと思います」

 実はテクノロジーに関する最先端にいるからこそ、それとの距離感には人一倍気を使っている。出張にも自らの足で出向き、音楽をレコードで聞くこと、お茶をペットボトルでなく急須で入れて味わうこと、そういった人間の持つアナログな感覚にもこだわる。

 「日常的にスマートフォンに依存する状態っていうのは、自分自身でも怖いと思っているんです。すべて便利にして最適化することには興味がありません。そういう意味でもパソコンぐらいオンオフがあって距離感のあるほうがいいのかなと思いますね」

「月の7割くらいは海外にいて、それこそVRやスカイプでもいいのではっていう話もあります。でも街の景色や音など現地へ行かないと得られない情報ってたくさんある。それがいろいろなアイデアを考えていくうえでヒントにもなるのです」
「月の7割くらいは海外にいて、それこそVRやスカイプでもいいのではっていう話もあります。でも街の景色や音など現地へ行かないと得られない情報ってたくさんある。それがいろいろなアイデアを考えていくうえでヒントにもなるのです」

協力/インテル

第1回
【PR】プログラミングスキルは子どもの未来の幸福度を上げる
第3回
【PR】パソコンは子どもたちの無限の可能性を引き出す道具