VRで全く新しい体験を生む

――PS VR用ソフトウエアのジャンルや趣向について、人気の傾向や広がり方を聞きたい。

 やはり、プレーヤー視点のFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)の人気が高い。世界的に一番人気なのは『バイオハザード7 レジデント イービル』(カプコン)、日本で人気なのは「サマーレッスン」シリーズ(バンダイナムコエンターテインメント)だ。ホラーや恋愛シミュレーションなどで味わうドキドキとVRは相性がいい。

PS VR発売1年、新型コンテンツにSIE吉田氏が手ごたえ(画像)
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 しかし、それにとどまらないゲームや体験を生み出すことに、クリエイターたちが今、挑戦している。例えば、東京ゲームショウ2017で試遊出展中の『V!勇者のくせになまいきだR』(SIE)は、ゲームのフィールドを俯瞰でき、これまでのFPSとは違った味わいのVRゲームになっている。ゲーム性の濃淡や有無にとらわれず、ユーザーが体験を楽しむことにこだわって、クリエイターがさまざまに趣向をこらしているところだ。

 その好例が、無料配信中のPS VR用アプリ『傷物語VR』(SIE)である。西尾維新原作のアニメ映画をもとにしたコンテンツである。アニメの豊富なコンテンツをすべてVR向けに作り直すのではなく、仮想空間を作り、その中の「バーチャルスクリーン」にアニメ映画(2D映像)を投影(プロジェクション)する。それを観客として、3D化したアニメのキャラクターと一緒に見られるというものだ。プレーヤーとキャラクターが映画を見る場所は、雨の校庭や密室など、次々に移り変わる。その場所に応じて、バーチャルスクリーンが一般的な映画のスクリーンだけでなく、時には水たまりになる。こうした映像表現を目にしたとき、これまでにないものだと感じた。現実に、水たまりにプロジェクションマッピングで映像を投影するのは非常に大変だ。そもそも、プロジェクションマッピング自体、準備に手間や時間がかかる。VRであれば、より手軽に実現できる。

 著名なヴァイオリニストのジョシュア・ベル氏のコンサート映像コンテンツ『Joshua Bell VR Experience』(SIE)でも、2Dと3Dを組み合わせて新しい体験を生んでいる。高精細なパノラマ映像のように見えるが、ユーザーは仮想空間を自由に動けるようになっている。録音した場所を3Dで構築し直し、実際に演奏者がいた位置に書割(かきわり)のポリゴンを立てて、2Dの映像をそこに投影するというものだ。3Dでのパノラマ撮影は技術的に困難だが、フォトグラメトリー(複数の場所から撮影した写真を解析・合成するなどして3D化する手法)などを用いて、VRらしい視点の自由と、2Dならではの高画質の映像を両立させている。