大麦の水溶性食物繊維が食後の血糖値上昇を抑える

――日本人の食物繊維の摂取量が減っています。

青江誠一郎氏(以下、青江): 特に米や小麦など、穀物からとる食物繊維が減っています。60年前の1955年、日本人は1日20グラム以上の食物繊維をとっていました。そのうち10グラムを穀物からとっていましたが、今では3グラム以下になっています。

 白米は食物繊維が少ないのに、それでも主食として量を食べるので、日本人にとって最大の食物繊維の供給源になっている状況です。もっと穀物から食物繊維をとろうとしたとき、第一選択肢は大麦しかないでしょう。白米は100グラム中に食物繊維0.5グラムしか含まないのに対し、大麦100グラム中には9.6グラムも含まれています。

身近な食材の食物繊維量(100g中)
身近な食材の食物繊維量(100g中)
※分析上、水溶性と不溶性に分けられないが、主な性質は水溶性。(データ:日本食品標準成分表2010、日経ウーマン・オンラインより転載)

――穀物からしっかり食物繊維をとると、どのような効果が期待できますか?

青江: 糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の予防に役立つことが分かっています。17の研究を統合解析した結果、穀物からの摂取量を多くしたほうが糖尿病のリスクが低く、野菜からの摂取量とは関連が見られなかったという報告もあります。

糖尿病のリスクを下げるのは野菜よりも穀物の繊維
糖尿病のリスクを下げるのは野菜よりも穀物の繊維
糖尿病の発症と食物繊維の摂取量の関係を調べた17の研究、合計約49万人分のデータをまとめて解析したところ、食物繊維の総摂取量よりも穀物からの食物繊維摂取量が多いほど糖尿病のリスクが低かった。野菜からの食物繊維摂取量との関連は見られなかった。(データ:Eur. J. Epidemiol.; 29,2,79-88, 2014、日経ウーマン・オンラインより転載)
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 糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の予防作用が食物繊維を多く含んだ穀物で顕著に認められる理由は、精製されていない穀物の性質によるところが大きいです。精製前の穀物では、でんぷん(糖質)と食物繊維が一緒になっているため、糖質の吸収を抑え、血糖値を上げにくくする。一方、精製すると食物繊維が取り除かれてしまうので、白米や小麦粉を食べると血糖値が高くなります。

――水溶性食物繊維の効果も大きいといわれています。

青江: 食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と、水溶性の食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は便の量を増やし、便通を良くする機能がありますが、多くの効能が実証されているのは水溶性のほうです。糖質や脂質の吸収を抑えるとともに、腸内細菌のエサになって腸内環境を整えることが分かっています。

 しかし残念なことに、野菜や玄米などに多いのは不溶性食物繊維で、水溶性食物繊維は少ない。ところが大麦100グラム中に含まれる9.6グラムの食物繊維のうち、実に6.0グラムが機能性の高い水溶性食物繊維です。

――水溶性食物繊維はどのくらいとればいいのでしょうか?

青江: 今の日本人は水溶性食物繊維を野菜や果物から1日3グラムくらいしかとっていませんが、できれば6グラムはとってほしいですね。大麦を50グラム食べれば3グラムプラスできる計算になります。

 大麦の水溶性食物繊維の大部分はβ‐グルカンです。オートミールに使われるオート麦や黒パンに使われるライ麦もβ‐グルカンは多いですが、日本人の食生活にはあまりなじみがありません。

 β‐グルカンには「食後の血糖値上昇を抑える」「コレステロール値を下げる」「心疾患のリスクを下げる」などの機能性表記が欧米で認められています。日本で行われた研究でも、白米に大麦を混ぜる割合が高いほど、食後血糖値が抑えられることが分かりました(J Clin Biochem Nutr. 2009 Mar;44(2):151-9)。

世界が認める大麦パワー
世界が認める大麦パワー
大麦の水溶性食物繊維、β-グルカンについては、数多くの研究報告をもとに、各国の公的機関が機能性の表示を認めている(日経ウーマン・オンラインから転載)。※1 欧州食品安全機関のこと、※2 米国とカナダは1日3g(0.75g×4回)
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――最近はダイエット目的で「糖質制限食」を取り入れている人も多いですが……。

青江: 「糖質制限食」のポイントは糖質を減らして食後の血糖値を上げないことです。しかし、極端な糖質制限食は危ないのです。

 人間が体を動かすためにはブドウ糖が必要です。極端な糖質制限食でご飯を抜くと、筋肉を分解してアミノ酸からブドウ糖が作られることになります。筋肉が減ると基礎代謝が落ちて、より太りやすくなります。糖質がないと脂肪も燃えません。

 また、糖質は乳酸菌やビフィズス菌といった、腸内のいわゆる善玉菌のエサになります。砂糖や果糖など甘いものは大腸まで届かず吸収されてしまうのでとりすぎないほうがいいが、食物繊維を含んだ穀物は絶対にとるべきです。