タカラトミーアーツ(東京・葛飾)のガジェット「ザ・昭和シリーズ」が好調だ。2019年2月28日に第1弾として「昭和スマアトテレビジョン」「昭和レコードスピーカー」「昭和ミニラジカセ」の3製品を発売。平成の終わりに伴い、「昭和懐古が来る」との読みが的中した。

左から「昭和ミニラジカセ」「昭和スマアトテレビジョン」「昭和レコードスピーカー」。税抜き価格はそれぞれ5480円、3980円、4980円と、おもちゃにしてはやや高めだが、それでも昭和世代には好評だという
左から「昭和ミニラジカセ」「昭和スマアトテレビジョン」「昭和レコードスピーカー」。税抜き価格はそれぞれ5480円、3980円、4980円と、おもちゃにしてはやや高めだが、それでも昭和世代には好評だという

平成最後に伴い、懐古ブームの到来を予測

 「ザ・昭和シリーズ」は昭和の代表的な家電をミニチュアにしたガジェットだ。40代から60代の“昭和世代”に受けており、具体的な数字は非公表ながら、19年4月段階で同社の在庫はゼロ。一番人気の「昭和スマアトテレビジョン」については、追加生産が決まった。

 新元号の施行を前に、なぜ昭和を題材にしたガジェットを作ったのか。タカラトミーアーツ FV事業部の鳥越永士郎氏は「平成が終わると聞いた時点で、懐古ブームが来るのは分かっていた」と話す。「今では見かけなくなった昭和の家電は多い。ガジェットにするなら、平成より昭和の家電のほうがインパクトがある」(鳥越氏)。

 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立したのは17年6月。その頃には、すでに「ザ・昭和シリーズ」の企画を進めていたというのだから恐れ入る。

「2019年はいろいろある。2020年の東京五輪を控えて1964年の東京五輪を懐かしんだり、NHK大河ドラマでも(東京五輪を背景とした)『いだてん』を放送していたり、映画『男はつらいよ』が50周年を迎えたり……」と鳥越氏(写真/吉村 永)
「2019年はいろいろある。2020年の東京五輪を控えて1964年の東京五輪を懐かしんだり、NHK大河ドラマでも(東京五輪を背景とした)『いだてん』を放送していたり、映画『男はつらいよ』が50周年を迎えたり……」と鳥越氏(写真/吉村 永)

 「新元号が施行されると話題がそちらに移ってしまう。その前のタイミングを狙って発売した」と鳥越氏は語る。実際、4月はテレビ番組の改編時期でもあり、19年3月末から4月にかけて、新元号にからんで昭和・平成を振り返る特別番組や情報番組も数多く放送された。そうした話題性もザ・昭和シリーズの売れ行きを後押しした。

SNSの特性を見極め、使い分けるプロモーション

 鳥越氏がザ・昭和シリーズの広告を出したのはFacebookとTwitter。さらにYouTubeには、“バブル芸人”こと平野ノラを起用した動画を公開した。中でもFacebookは利用者の年齢層が高めで、昭和のガジェットに懐かしさを覚える世代に訴求するには最適なツールと判断した。実際、Facebookに関しては「他の商品と比べて圧倒的に広告のクリック率が高かった」と鳥越氏。

 Twitterについては、「トレンド層というか、発信力のある若い人たちが多いので、そこから広めてもらってターゲット(としている50~60代)に届くようにした」と鳥越氏は話す。ザ・昭和シリーズの各商品、例えば「昭和スマアトテレビジョン」では時折“砂嵐”が表示されるなど、ユニークな仕掛けを搭載しており、それが「面白い」と話題になる。Twitterで話題に上ればテレビの情報番組やニュースサイトで取り上げられ、本来のターゲット層が商品を目にする機会も増えるというわけだ。

YouTubeに公開されている「ザ・昭和シリーズ」の動画。実際はHD画質なのだが、あえてダビングで劣化した画質を表現したり、ノイズがチラついたりするように仕上げている。そういったこだわりも“昭和世代”がはまるツボだ
YouTubeに公開されている「ザ・昭和シリーズ」の動画。実際はHD画質なのだが、あえてダビングで劣化した画質を表現したり、ノイズがチラついたりするように仕上げている。そういったこだわりも“昭和世代”がはまるツボだ

 「50代、60代といっても、最近は多くの人がスマートフォンを使っている。商品の認知経路としては『インターネットで知った』という人も多く、テレビCMを打たなくても、きちんとターゲット層に届いている」(鳥越氏)。

 ザ・昭和シリーズは、直販サイトの「タカラトミーモール」の他、玩具店や家電量販店、ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガード、東急ハンズといった生活雑貨の店でも取り扱っており、幅広い世代が直接目にする機会も多い。タカラトミーが持つ販路の広さも、好調な売れ行きを支えたといえそうだ。

「これ、あったよね」という共通認識

 ブラウン管テレビ、レコードプレーヤー、ラジカセといった、今では見かけなくなった家電に共通するのは、昭和世代の「これ、あったよね」という認識だと鳥越氏は指摘する。前述のように、ザ・昭和シリーズには「昭和の家電あるある」で盛り上がれるさまざまな仕掛けが用意されている。それらが話題になったからこそ、ヒットにつながった。

 まず、スマートフォンをセットしてYouTubeの動画を再生する「昭和スマアトテレビジョン」は、あえて映像が乱れるようにしており、“砂嵐”が表示された際は天板の部分を軽くたたくと乱れが直る「砂嵐手振動修復方式」を採用している。最近の薄型テレビにはないチャンネル「黄金ダイヤル」も飾りではなく、これを回すことで表示チャンネルを変えることが可能だ。さらにモニター部分の下には「収納スペース」まであり、当時のテレビを知っている昭和世代のノスタルジーをくすぐる。

「昭和スマアトテレビジョン」は、スマートフォンをセットした上で、専用アプリでYouTubeの動画を再生する仕組み。高さ154.72ミリのグーグル Pixel XLは少しはみ出してしまった
「昭和スマアトテレビジョン」は、スマートフォンをセットした上で、専用アプリでYouTubeの動画を再生する仕組み。高さ154.72ミリのグーグル Pixel XLは少しはみ出してしまった

 「昭和レコードスピーカー」は、レコードプレーヤーの形をしたBluetoothスピーカー。レコードを本体にセットして針を落とすと、スマートフォンに保存した楽曲が再生される仕組みだ。付属のレコードは昔懐かしいドーナツ盤とソノシートで、レコードの回転数を切り替えるスイッチも付いている。

「レコードスピーカーは意外と女性人気が高かった」と鳥越氏。若い女性の目には“見たことがない”“かわいい”の“レトロかわいい商品”と映ったようだ
「レコードスピーカーは意外と女性人気が高かった」と鳥越氏。若い女性の目には“見たことがない”“かわいい”の“レトロかわいい商品”と映ったようだ

 「昭和ミニラジカセ」はFM/AMラジオとして使える。付属の「カセットテープ」はダミーだが、このミニカセットが本体内蔵のICレコーダーのスイッチになっている。カセットを本体にセットすることで、A面、B面、各最長5分の録音が可能になる。

 タカラトミーアーツでは、第2弾として「昭和扇風機」を19年6月27日に発売する予定。首振り機能やタイマー機能を搭載しており、涼風・強風を設定できる。机の上に置くUSB扇風機は夏の定番商品なので、こちらも話題に上りそうだ。

「昭和ミニラジカセ」の本体は幅約160ミリの手のひらサイズ。カセットテープは幅約32ミリとなっている。本体の「早送り」「巻き戻し」ボタンを押すとキュルキュルというカセットテープならではの音が鳴るのも面白い
「昭和ミニラジカセ」の本体は幅約160ミリの手のひらサイズ。カセットテープは幅約32ミリとなっている。本体の「早送り」「巻き戻し」ボタンを押すとキュルキュルというカセットテープならではの音が鳴るのも面白い