森永製菓「大粒ラムネ」が売れ続けている。2018年3月の発売から1か月足らずで年間販売計画数量を売り切り休売に。同年10月に全国で販売を再開した後も売り上げを伸ばしているという。発売以来45年変わらず売れ続けた通常の「ラムネ」が突如ブレークしたことで開発した。ブームの背景に迫る。

1973年から安定した売り上げを続ける森永製菓「ラムネ」(右)と2018年3月に発売されたラムネの1.5倍の大きさの「大粒ラムネ」(左)
1973年から安定した売り上げを続ける森永製菓「ラムネ」(右)と2018年3月に発売されたラムネの1.5倍の大きさの「大粒ラムネ」(左)

 大粒ラムネは、飲料ラムネの瓶を模した容器に入った通常の「森永ラムネ」より粒の大きさが1.5倍になったパウチ入りの商品だ。通常のラムネと原材料は同じで、ブドウ糖が90%配合されている。通常ラムネのターゲット層は子供に買い与える30~40代の主婦だが、大粒ラムネは通常ラムネの自己消費が近年急増していた40代男性ビジネスパーソンをメインターゲットに据えている。

「ぶどう糖90%」で突如ブレークした通常ラムネ

 子供のお菓子だったラムネがビジネスパーソンの間で売れ出した理由は、「ぶどう糖90%」という原料の配合だった。

 1973年の発売以降、大きく上下せず安定した売り上げを続け、森永製菓でも「優等生」と呼ばれていたラムネの売り上げ曲線は、2014年ごろから急に右肩上がりになった。きっかけは、個人のブログで「ブドウ糖のおかげで集中力が高まる」「二日酔いに効く」といった効果を取り上げられたこと。

 その後テレビ番組でも取り上げられたり、医師のブログでは「砂糖の分解を阻害する薬を飲む人が低血糖になったときには、ブドウ糖90%の森永ラムネを食べればよい」と紹介されたりしたことで、一気にSNSで拡散された。

 「ブドウ糖商品の登場で効能への認知度がアップしたことも影響した」と、森永製菓・菓子第二マーケティング部長の村瀬光隆氏は、ラムネの突然のブレークの理由を指摘する。

 市販のラムネ菓子ではあまり使用されていないブドウ糖を原材料にした理由は何なのか。村瀬氏は、「瓶に入った飲料のラムネを再現するため採用している。ブドウ糖は水分と反応すると吸熱作用があるため、口の中でシュワシュワとした爽快感が得られる」と説明する。

 こうして通常ラムネの売り上げの急成長を受け、大人向けのラムネ製品を開発することになった。

森永製菓・菓子第二マーケティング部長の村瀬光隆氏
森永製菓・菓子第二マーケティング部長の村瀬光隆氏

大人向け商品2回の挫折で原点回帰

 村瀬氏によると、「大粒ラムネ」の発売に至るまでに、大人向けパウチ入りラムネの開発で2回の挫折を経験したという。まず15年に二日酔い効果を訴求するためウコン配合の「ラムネのチカラ」を、16年には20~40代の女性向けに甘さ控えめの果汁炭酸飲料味の「スパークリングラムネ」を発売したが、「まったく売れずどちらも1年で販売停止になった」(村瀬氏)という。

女性向けに発売した「スパークリングラムネ」
女性向けに発売した「スパークリングラムネ」

 一方、通常の森永ラムネのブレークは止まらず認知率も約85%と高かった。そこで森永製菓は、新価値を付加するのではなく原点に立ち戻ることにした。携帯に便利なパウチ容器はそのままで、認知の高い森永ラムネのデザインを踏襲したパッケージデザインにした。品質は変えずに粒を大きくすることで、大人向けの商品だとアピールした結果、年間販売計画数量を1カ月足らずで売り切った。

 「まさかここまで売れるとは正直思っていなかった」と、村瀬氏は想像以上のヒットに驚いたという。18年7月に関西以西で再販後、10月には全国で販売を再開すると再び飛ぶように売れ、さらに通常のラムネの売れ行きが衰えず、「ラムネ製品だけで単純に4年前の2倍の売り上げになった」(村瀬氏)。

東大とコラボで受験生にもアピール

 村瀬氏は今回の森永ラムネの大ヒットは、「消費者からの拡散で後押しされた」という。それを踏まえ、堅調な売り上げを維持していた“優等生”の土台の上で、さらにどう森永ラムネを広げていくかを考えた結果、今度は受験生に狙いを定めた。

 そこで17年からは、受験生にも「ぶどう糖90%」の効果を訴求し始めた。東京大学の生協でよく売れているという情報を聞き、18年には東京大学の学生が編集する「東京大学新聞」にタイアップ記事も掲載した。

 19年秋には新作を含めた新しい施策を検討しているという。ラムネブームの波をさらに大きくできるかどうか、次の一手に注目したい。

森永製菓のHP上でもビジネスパーソンに加え、受験生にもアピールしている
森永製菓のHP上でもビジネスパーソンに加え、受験生にもアピールしている

(写真/北川聖恵)