サントリーは2012年に販売を終了した人気発泡酒「マグナムドライ」を、第三のビール(新ジャンル)で復活させた。新ジャンル市場の成長で、消費者がよりビールに近い味わいを求めるようになった、ニーズの変化に対応する。ビール類の酒税統一化に向けた戦略の一環でもある。

2019年4月2日に発売したサントリー「マグナムドライ<本辛口>」
2019年4月2日に発売したサントリー「マグナムドライ<本辛口>」

新ブランドよりも“過去の栄光”の強さを生かす

 「帰ってきたウルトラマン」のテーマソングをバックに、反町隆史とEXILEのNAOTOがおいしそうに第三のビールを飲む――。40~50代男性をコアターゲットにサントリーが2019年4月2日に発売した「マグナムドライ<本辛口>」のCMだ。1999年に発売した発泡酒「マグナムドライ」を、新ジャンルで復活させたのがこの製品。若い層への訴求も念頭に、CMキャラクターにコアターゲット層の反町に加え、NAOTOを起用した。

 新ジャンルの台頭で発泡酒の存在感が薄れたため、サントリーは12年に発泡酒のマグナムドライの製造を終了した。今回の新製品投入に当たり、「新ブランドで“ドライ”を打ち出すのではなく、今でも87%という非常に高いブランド認知率を誇り、20年の歴史のある『マグナムドライ』を選んだ」と、サントリーマーケティング本部長の和田龍夫氏は“再登板”の理由を説明する。

サントリーマーケティング本部長の和田龍夫氏
サントリーマーケティング本部長の和田龍夫氏

 さらに新製品開発の背景について、和田氏は「ビールと新ジャンルがボーダーレス化したことで、消費者ニーズが変わった」と話す。サントリーが2712人を対象に実施したWEB調査によると、ビールと新ジャンルのどちらも飲むという人は全体の56%と過半数を占めた。これに伴い新ジャンルに求める価値は、「コク」や「キレ」といったビールに近い味わいにシフトしている。特にコアターゲット層で、この傾向が顕著だという。

 そこで新製品は、既存商品の「金麦」でカバーできない“キレ”を魅力として打ち出す。サントリー新ジャンル史上最高の発酵度でキレを高め、ドライ麦芽を従来の2倍にして刺激を強化。さらにアルコール度数を6%にして、飲みごたえを実現したという。

サントリーの調査によると、ビールと新ジャンルのどちらも飲む人は過半数。消費者ニーズは「ビールに近い味」にシフト
サントリーの調査によると、ビールと新ジャンルのどちらも飲む人は過半数。消費者ニーズは「ビールに近い味」にシフト

 サントリーは19年2月に「金麦<ゴールド・ラガー>」を発売。本格的なコクをアピールし、ブランド強化を図っている。「金麦」「金麦<糖質75%オフ>」で飲みやすさを、「金麦<ゴールド・ラガー>」で本格的なコクを打ち出し、新たにキレをアピールする商品をラインアップに加えたわけだ。

 同社が新ジャンルに注力する理由には、26年の酒税法改正でビール類の課税率が同一になるという事情もある。ビールとの価格差が縮まるため、新ジャンルの“苦戦”を見据えた戦略が不可欠。だからこそ「今のうちに、新ジャンルの価値を高めておかなければならない」(和田氏)と判断した。

反町とNAOTOがポーズでキレを表現
反町とNAOTOがポーズでキレを表現

 コミュニケーション戦略では、テレビCM用に「帰ってきたウルトラマン」のテーマソングの替え歌を作った。コアターゲット層にとってなじみの深い音楽を使用することで、認知を促す。「聞きなじみよく、記憶に残る歌ができた」と和田氏も自信をのぞかせる。

 発泡酒のマグナムドライは、「サントリーのビール類において、平成で最も売れた商品。平成のマグナムドライが、新時代のマグナムドライを作り出す」(和田氏)。過去の実績と看板を受け継いだだけに、新製品に懸ける同社の期待は大きい。

(写真/中村 宏)

■変更履歴
本文中、サントリーが「発泡酒市場から2012年に撤退した」とありましたが、同年に販売を終了したのは「マグナムドライ」でした。本文は修正済みです。お詫びして訂正します。[2019/04/04 22:53]