大阪といえば道頓堀のグリコの看板やお笑いのイメージが強い。それだけでは語れない、“大阪らしさ”を表現したいという思いで開発された都市型ブティックホテル「THE BOLY OSAKA(ザ・ボリー・オオサカ)」が、2019年3月29日、大阪・北浜に開業する。こだわりのポイントに迫る。

中之島の南側を流れる土佐堀川沿いにオープンするブティックホテル「ザ・ボリー・オオサカ」(住所:大阪市中央区北浜2-1-16)。空間デザイン事務所「インフィクス」が企画開発からデザイン、運営まで手掛ける
中之島の南側を流れる土佐堀川沿いにオープンするブティックホテル「ザ・ボリー・オオサカ」(住所:大阪市中央区北浜2-1-16)。空間デザイン事務所「インフィクス」が企画開発からデザイン、運営まで手掛ける

ターゲットはアクティブ層と観光客

 ザ・ボリー・オオサカは築約60年の古い建物を改築して造られた。東急プラザ銀座や有楽町マルイなどの空間デザインで知られる「インフィクス」が、企画デザインから運営までを手掛ける。同社にとって本格的なホテル事業は今回が初めて。建物は数年前に購入し、自社オフィスとして使用していたが、「ホテルとしてリノベーションし、新たな価値を加えることが今の時代に合っている」と、インフィクスの間宮吉彦代表取締役社長はホテル事業に参入した理由を明かす。

ビルの1階には、2009年にニューヨークのブルックリンで誕生した人気カフェ「BROOKLYN ROASTING COMPANY」がある。フラワーショップも併設。地下1階にはギャラリーを開設し、音楽イベントなどを開催する
ビルの1階には、2009年にニューヨークのブルックリンで誕生した人気カフェ「BROOKLYN ROASTING COMPANY」がある。フラワーショップも併設。地下1階にはギャラリーを開設し、音楽イベントなどを開催する

 狙いは、これまであまり知られることのなかった大阪らしさの発信拠点を作ること。インバウンドによる海外からの観光客が急増し、ホテルの建設ラッシュと観光ブームに沸く大阪は、現在、宿泊料金の価格競争が激化している。

 そこで空間デザイン会社ならではのデザインと、大阪人の目線を大切にした、大阪らしいホテルで他施設との差別化を図ろうというわけだ。ターゲットは日本や大阪に関心の高いアクティブ層と、ホテルでの体験にこだわる国内外の観光客。全14室のコンパクトなホテルながら、センスが良く、景観も楽しめるリノベーションホテルとして話題を呼びそうだ。

フロントのある6階のラウンジには、ゆっくりくつろげる共有スペースやスナックバー、オリジナルグッズコーナーなどがある
フロントのある6階のラウンジには、ゆっくりくつろげる共有スペースやスナックバー、オリジナルグッズコーナーなどがある

 大阪・梅田から地下鉄御堂筋線で1駅目の淀屋橋駅から徒歩5分。中之島公会堂などの近代建築や、ビジネス拠点が集積する北浜の川沿いに「ザ・ボリー・オオサカ」はある。近年、水辺のにぎわいを取り戻すプロジェクトが進められ、川沿いを中心におしゃれなカフェやレストランが点在。大阪を代表するエリアの1つになっている。

 ところが観光客が抱く大阪のイメージは道頓堀や新世界で、中之島や北浜の認知度は低い。河川の水運の発展と共に街が栄えてきたが、戦後、輸送の主体が陸運に変わり、水辺の交流が衰退してしまったのが大きな理由だ。

 「界隈(かいわい)は大阪文化の発祥地。旦那衆が道楽で建てた建造物が今も残っている。土佐堀川には料亭や旅館が軒を連ね、小舟で遊びにいっていた。もともとあった大阪を刷新することで、これまで知られてこなかった大阪を発信していきたい」と間宮氏は話す。

フロントのカウンターは30年近く自社オフィスで使用していた、システム家具ブランド「USMハラー」のもの
フロントのカウンターは30年近く自社オフィスで使用していた、システム家具ブランド「USMハラー」のもの

 とはいえ、当初はホテルに改築する構想ではなかったという。テナントビルとしては使いづらく、いずれは建て替えるつもりだった。ホテルとして開発する決断をしたのは、「あえて古いビルに泊まるという体験型の宿泊に価値観がある」(間宮氏)と考えたからだ。

 例えば客室のコンクリートの梁(はり)や壁の一部は、古い躯体(くたい)をそのまま生かし、武骨な雰囲気。古びた床やエレベーターの入り口を縁取る石にも、昭和っぽさが感じられる。特定のスタイルに固執するのではなく、自身の感性でいろいろなものを組み合わせて、価値あるものに変えていくのが間宮流だ。

ベッドカバーやソファのクッションにヒョウ柄が。この辺りに大阪人の遊び心を感じるが、コテコテではなくむしろオシャレなのがポイント
ベッドカバーやソファのクッションにヒョウ柄が。この辺りに大阪人の遊び心を感じるが、コテコテではなくむしろオシャレなのがポイント

 「トリュフビーチの突板(つきいた)を壁に使ったり、ヒョウ柄のベッドカバーなどパワフルで面白い大阪をあえて取り入れたのは、大阪らしさを求めて遊びにきた観光客のための演出。地味派手をセンス良く表現した」(間宮氏)

 川辺の環境をデザインに取り込んでいるのも大きな特徴だ。川沿いのすべての部屋から中之島が一望でき、テラス付きの客室では外の風を感じながら特別な時間を過ごすことができる。川に面した客室には水を、反対側の道路に面した客室には光を取り入れたデザインが印象的。夜になると、客室の壁に水の揺らぎが映し出されるといった演出も心地良い。

パノラマに広がる窓からは、中之島公会堂や土佐堀川を運行するクルーズ船など中之島の河川風景を一望でき、川沿いを独り占めする気分を味わえる
パノラマに広がる窓からは、中之島公会堂や土佐堀川を運行するクルーズ船など中之島の河川風景を一望でき、川沿いを独り占めする気分を味わえる