日本人がシンガポールで起業したベンチャーのAnyMind Groupは、主に東南アジア各国の市場に対し、デジタルマーケティングやHRテックの領域でAI(人工知能)ソリューションを提供する。今回、第三者割当増資で800万米ドル(約9億円)を調達し、タイをはじめとする東南アジアで事業を拡大する。

AnyMind GroupのWebサイト
AnyMind GroupのWebサイト

 AnyMind Groupは、タイ最大手のデジタルサイネージ運営会社であるVGI Global Media(タイ・バンコク)と、アジア企業に積極的な投資を続けるベンチャーキャピタル、東京センチュリー(東京・千代田)から、第三者割当増資の形で800万米ドル(約9億円)を新たに調達。併せてVGIとのジョイントベンチャー(JV)「VGI AnyMind Technology」を設立する。

 新たに設立したJVは、VGIが既にタイ国内の公共交通機関やビルボード、オフィスのエレベーター、高速道路沿いなどに設置済みで約4000万人にリーチできるデジタルサイネージをすべて通信ネットワークで結ぶ。そのうえで各サイネージ近辺にカメラを設置し、サイネージの前を通る人の流れやサイネージを見た人を撮影して、年齢・性別などの属性を把握し、サイネージに興味を示した人にふさわしい広告を、AIを使って表示する仕組みを構築する。

 AnyMind Groupの十河宏輔共同創業者兼CEO(最高経営責任者)は、「タイでは『DOOH(デジタル・アウト・オブ・ホーム)』と呼ばれるデジタルサイネージ向け広告市場が拡大中。かつサイネージに流す広告を動画で見せたいという広告主のニーズも急速に高まっている。広告を見てほしいユーザー層にターゲティングしてデジタルサイネージに動画を流す仕組みを構築すれば、価格が高めでも利用する広告主は多い」と狙いを語る。

 VGIは既にマレーシア、インドネシアにも事業を広げている。タイで成功したらマレーシア、インドネシアなど他国へも、JVが手掛ける、AIを活用した新たなデジタルサイネージ向け広告配信サービスを展開。さらに、スマートフォンやデスクトップパソコン向けに広告を配信している「アドアジア・デジタル・プラットフォーム」にデジタルサイネージ向けの配信を組み込む。多くのメディアに対して最適な広告を配信できるサービスを東南アジアに広げていく考えだ。

 また日本でも既に、大手鉄道会社と組んでデジタルサイネージへの広告配信サービスをテスト中。今後、デジタルサイネージを多数抱える運営会社と提携して、日本のDOOH市場にも参入する腹積もりだ。

インフルエンサーマーケティングにも注力

 AnyMind Groupが力を入れるのは、DOOH市場だけではない。インフルエンサーマーケティング事業も強化する。YouTubeとLINE TVを合わせて500以上のチャンネルと3000万人以上の登録者を抱え、月間約6億回の視聴回数を稼ぐ、タイで1、2を争う巨大MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)事業者であるMoindy Digital(モインディ:タイ・バンコク)を買収。併せてタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、マレーシアの5カ国で、Casting Asia Creators Network(CACN)を立ち上げた。

 CACNでは、AnyMind Groupが東南アジアで展開するインフルエンサーマーケティング支援事業「CastingAsia」に登録済みの3万5500人のインフルエンサーに加え、新たなインフルエンサーを育成したり、インフルエンサーへのコンサルティングを手掛けたりする。具体的には、インフルエンサーに対して、投稿するメディアやチャンネルを選択する際のアドバイス、実際にコンテンツを制作する際のコンサルティングやスタジオ貸し出し、発信するターゲットを選択する際のアドバイス、それにマネジメントサービスなどを提供する。

 CACNとモインディを合わせ、モインディが培ってきたマルチチャンネル配信のノウハウを生かし、東南アジア全域で、インフルエンサーを育成・マネジメントしながらインフルエンサーマーケティング事業を展開する体制を整える。

 十河CEOは、「YouTubeなどのデジタルプラットフォームは、テレビと異なり、視聴者の動向をデータで収集できる。このデータを蓄積・分析して、広告主に対しては、メッセージに共感できるフォロワーを持つインフルエンサーを素早く提示し、一般ユーザーに対しては、自分の好みに合ったインフルエンサーのコンテンツをレコメンドできるような、インフルエンサーマーケティングのプラットフォームを、他社に先行して構築することを目指す」と語る。そのため、広告主との関係を強化するだけでなく、インフルエンサーとの関係を強化することを狙って、CACNを立ち上げた。

 AnyMind Groupは、先行して新たなサービスを提供し、東南アジアでの地歩をいち早く固めてから、日本などの成熟市場を本格的に開拓にかかる考えだ。