「消費者の未知のニーズ」の探知を目指す江崎グリコ

 今回ヤフーが発表した3つの機能は、サービスを利用する顧客にとって具体的にどのようなメリットがあるのか。その点については、「データフォレスト構想」の実証実験に参加した江崎グリコと、セブン&アイ・ホールディングスの事例が参考になるだろう。

 「飽食の時代がますますやってくる。満たされない消費者ニーズを検知して新商品開発につなげることが重要で、新たなものづくりの方法を探すのが食品会社のテーマ」と江崎グリコ執行役員マーケティング本部商品開発研究所長の宮木康有氏は言う。

 江崎グリコはヤフーが保有するデータを使って、食に関する消費者の興味・関心を検索する手法の確立に取り組んだ。ダイエットに関する検索のトレンド分析で、ある“栄養素X”の検索に特徴があることを発見した。その分析にビッグデータを組み合わせると、消費者の興味関心を定量的に捉えられることを確認。ターゲットとする人物像など、定性的な分析もできた。

 モニター集めなどが必要な従来の調査手法に比べて、かなり時間が短縮できたのもメリットだった。さらに従来は“調査”であることが意識されたデータしか入手できなかったが、ヤフーのビッグデータは利用者側に“調査”という意識がない(そもそもワード検索自体は調査ではない)のも特徴だ。これを受けて宮木氏は、「すでに消費者が意識している課題やニーズの検知にとどまらず、消費者が無意識のうちに検索している行動から『未知のニーズ』を探知するような手法が作れないか検討していく」と話す。

 今後、栄養素Xに関しては消費者ニーズに対応した商品の開発を進めるという。

江崎グリコ 執行役員 マーケティング本部 商品開発研究所長の宮木氏
江崎グリコ 執行役員 マーケティング本部 商品開発研究所長の宮木氏

セブン&アイ・ホールディングスが探る「真のニーズ」

 セブン&アイ・ホールディングス執行役員デジタル戦略部シニアオフィサーの清水健氏は、同社が集めたいデータを「分析に足るだけの十分な量を持っていること。多面的な分析が可能になるように多様性を持っていること、データそのものに価値があること」と前置きした上で、「ヤフーのデータは真のニーズを探る手がかりになる。量も多様性もあるが、特にバリューが高いデータだと認識している」と語った。

 清水氏は同社がヤフーとの実証実験でつかんだヒントとして、4つの実例を挙げた。

 1つ目は「本質的な問題」の気づき。例えば新婚家庭ではレシピを調べるとき、「キャベツ レシピ」「きゅうり レシピ」など、料理名ではなく素材名で検索する傾向が見られた。となれば「『回鍋肉のミール・キット』として(商品を)出すよりも、『キャベツのためのミール・キット』としてキャベツ抜きの回鍋肉セットを出したほうが単価も下げられ、ニーズがあるかもしれない」(清水氏)。

 2つ目は「意外な悩み」の発掘だ。たとえば服装の悩み。季節や冠婚葬祭の服装で悩んでいるというなら分かりやすいが、ヤフーのデータからここ数年、年末に「忘年会の服装」を検索する人が3倍になっていることが分かった。これによって「“忘年会コーディネート”の紹介も、ニーズがあるかもしれないとヒントをつかんだ」(清水氏)。

セブン&アイ・ホールディングス執行役員デジタル戦略部シニアオフィサーの清水氏
セブン&アイ・ホールディングス執行役員デジタル戦略部シニアオフィサーの清水氏

 3つ目の「前提の変化」で清水氏が挙げた事例は「おせち」。お重セットできっちりそろえるのが“前提”だったおせちが、今では「インスタ映え」や「おしゃれ」といったキーワードとのダブル検索が多くなっていた。このことから、「一つ一つの部品をきれいに目立たせるように、単品でおせちの部品を売る売り方もいいかもしれない」と清水氏は推測する。

 最後が「隠れたニーズ」。同社は年末年始やクリスマスの時期になると、それに“ふさわしい”と思われる食材を品ぞろえしてきた。しかし意外にも生活者は「『カニ鍋』や『エビチリ』を検索している。細かいニーズ、特に隠れたニーズについては客観的につかむ手段がなかったので、非常にヒントになった」と清水氏。

 これらの事例を踏まえて、清水氏は「こういった示唆を今後は具体的なサービスに結び付けていきたい。そういう面でもヤフーと協力して取り組みを進めていきたい」と語った。