「犯人捜し本能」に気を付けよう

 果たしてその矛先は正しいのだろうか。厚労省のサイトには、調査結果の詳細がアップされている(上図)。性別・年代別に見ると、「子どもの声は騒音」に同感する不寛容派が一番多いのは、40代女性で実に49.9%に上っている。一方、最も理解があるのは60~70代男性で、「全く同感できない」と「あまり同感できない」を合わせた寛容派が78.2%を占めている。

 アンケートは選択式で、そう考えた具体的な理由までは分からない。想像するに、男性よりは女性の方が保育園の開園時間帯に在宅している人が多く、声や音が聞こえてくる生活をよりリアルにイメージしやすい分、ネガティブな反応が出てしまうのかもしれない。また40代は保育園世代の子育ては過ぎている人が多いため、自分の子育て中にすぐ隣近所にあったら便利だったであろう保育園が今さらできることを想像して、複雑な思いを抱いたかもしれない。そこらへんの想像力は、同世代男性よりも働きやすいと思われる。

2014年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」
2014年度「駅と電車内の迷惑行為ランキング」

 同様にイメージと実態がずれる内容として、駅や電車で迷惑だと思う行為のランキングがある(上図)。日本民営鉄道協会が実施した14年度の調査では、「混雑した車内へのベビーカーを伴った乗車」が男性は8位(16.5%)だったのに対し、女性は3位(30.2%)だった。「女の敵は女」などと冷やかしたいのではない。ベビーカー乗車の多くがママ(女性)であることから、自分の経験、流儀、一家言あることに対して、人は見る目が厳しくなりがちということだろう。

 ちなみに翌15年度の調査から、ベビーカーは選択肢から外れた。「ヘッドホンからの音もれ」や「ゴミ・空き缶等の放置」と並んでベビーカーを伴った乗車が選択肢にあること自体がおかしいと言えばおかしかった。懸命な判断だろう。

 好評を博している書籍『ファクトフルネス』(日経BP社刊)で著者のハンス・ロスリング氏は、物事がうまくいかないときに誰かを見せしめとばかりに責めることを「犯人捜し本能」として戒め、「犯人ではなく、原因を探そう」と提唱している。誰かを責めると、絡み合った複数の原因やシステムに目が向かなくなるためだ。

 保育園建設反対派とそれを糾弾する両者の対立も、この「犯人捜し本能」が当てはまる。これは拙著『だから数字にダマされる 「若者の○○離れ」「昔はよかった」の9割はウソ』の第2章「イメージでレッテルを貼るのはやめよう」p.70~74から抜粋した。

 次回は、「150万人減少」といった大きな数字一つだけで結論を導いてしまうことの問題点を、若者の海外旅行者数を例に解説したい。