モビリティ革命「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の主軸サービスとして、自動運転による新たなモビリティサービスの普及が期待されている。米国の調査会社によると、その経済規模は世界で1000兆円超。最新の数字を交えて、その経済インパクトを解き明かす。

(写真/Shutterstock)

 鉄道やバス、タクシーなど、これまで別々に提供されてきた交通サービスを統合し、現在のマイカーによる移動と同等か、それ以上に快適な移動体験をもたらすモビリティ革命「MaaS」。自動運転による配車サービスなどのテクノロジーの進化を伴って、今後、世界でMaaS市場は急拡大することが予想されている。

 では、その経済インパクトは一体どれほどのものか。MaaSを構成する重要なピースとなる「自動運転タクシー」を中心にした市場予測を2017年に発表したのが、米国の調査会社、アーク・インベストメント・マネジメント・エルエルシーだ。同社による最新の見立てを、テーマ・リサーチ・アナリストのターシャ・キーニー(Tasha Keeney)氏に聞いた。

米アーク社のターシャ・キーニー(Tasha Keeney)氏。同氏は、日興アセットマネジメントの投資信託「グローバルMaaS:グローバル・モビリティ・サービス株式ファンド」の組入銘柄について助言を行っている

17年に発表したレポート「MOBILITY-AS-A-SERVICE(サービスとしてのモビリティ):なぜ自動運転車は全てを変えうるのか」では、30年代初頭までにMaaSの市場規模は10兆ドル(約1090兆円)を超えると試算されています。どんな内訳ですか?

ターシャ・キーニー氏(Tasha Keeney、以下キーニー氏) 我々はMaaSの中でも「自動運転」に着目しており、このレポートで主眼を置いているのは個人向け自動運転タクシーなどの商業化による経済インパクトです。18年末に米グーグル系の自動運転開発会社であるウェイモ(Waymo)が、自動運転タクシーサービスである「Waymo One(ウェイモ・ワン)」を米国の一部エリアで始めましたが、20年代の終わり頃には自動運転タクシーがドア・ツー・ドアの移動手段の主流になるという予想が前提になります。

 10兆ドル(約1090兆円)というインパクトのある市場予測の算出方法ですが、自動運転タクシーについては走行距離と、それに対して消費者が支払う自動運転タクシーの料金の予測値を掛け合わせています。例えば、現在の米国におけるタクシーの走行距離は年間35億マイルで、自動車の総走行距離である3兆マイルの0.1%に過ぎません。しかし、自動運転タクシーが24時間どこでも使える状態になると、その走行距離は5年以内に1000億マイルを超えるでしょう。

 一方、自動運転タクシーが普及した際の1マイル当たりの料金は、レポートを発表した当時(17年)は35セント(約38円)と見ていましたが、最新の分析では30セント(約33円)を下回ると予想しています。米国のタクシーは3.5ドル、自家用車で70セントかかりますから、自動運転タクシーの経済性は非常に優れています。ドア・ツー・ドアの利便性も相まって、利用する人は爆発的に増えるでしょう。

サービス別の自動車の総コスト
出典:アーク・インベストメント・マネジメント(ARK Investment Management)

自動運転タクシーサービスの市場は、そこまで急速に立ち上がるでしょうか。

キーニー氏 先ほどお話した通り、既にウェイモは米国で自動運転タクシーサービスを始めました。米ゼネラルモーターズ(GM)、米テスラモーターズも向こう1~2年以内に同様のサービスを開始できるとリリースしています。彼らがこの約束を履行し、より進化した自動運転技術を搭載した車両を出すことができれば、自動運転タクシーサービスの導入率は、むしろ我々の予測よりももっと上がると見ています。従って、このレポートは保守的だと言えるでしょう。

自動運転タクシーが普及していく中で、クルマの個人所有が減るという予測です。マイカーが減るスピードと規模はどう考えていますか?

キーニー氏 自動運転タクシーの総走行距離数がどのように伸びるか次第ですが、個人が所有するクルマの販売台数は時間の経過とともに確実に下がると考えられます。我々は、北米や欧州では20年代後半にクルマの販売台数が現在の半分になる可能性もあると見ています。

 しかし、全員がいきなりクルマを購入しなくなるわけではありません。都市部では自動運転タクシーが急速にシェアを伸ばすことでマイカーはいらなくなりますが、例えば地方では、クルマを2台所有していた世帯が1台に減らすイメージです。

 自動運転タクシーの稼働率ですが、クルマを個人所有する8人分の車両が自動運転タクシー車両1台分に置き換わるというレベル感。劇的にマイカーのニーズが減る一方で、サービスを提供する法人向けの自動運転タクシー車両が急速に普及しますので、自動車販売台数の減少は半分にとどまると見ているわけです。

 また、コスト競争力や利便性を兼ね備える自動運転タクシーは、運転に不安を抱える高齢者や、運転免許取得前の若者、障がい者などの移動需要を新たに取り込むでしょう。それにより法人向けの販売台数は伸び、自動運転タクシーの走行距離も現在の自動車の総走行距離を大きく上回る水準で劇的に伸びるはずです。

例えば中国では、クルマの運転免許を持っている人は人口の20%ほどで、現状あまり多くありませんから、短期的にはクルマの販売は伸びると思います。しかし、自動運転タクシーが非常に安価に普及すれば、マイカーの所有という過程を経ずに自動運転タクシーを使うようになるでしょう。

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