春の引っ越しシーズンを前に、斬新なサービスが登場した。引っ越しトラックの空きスペースをシェアし、引っ越し業者の生産性向上、割安な利用料金の実現を狙うサービスだ。物流業界の人手不足、長時間労働問題を端緒に、2018年に社会問題化した“引っ越し難民”の救いの一手になるか。

引っ越しのハイシーズンが目前に迫っている(写真/Shutterstock)

 社会人の転勤や転職、学生の進学など、新生活に向けた引っ越しが盛んになるシーズンが近づいてきた。例年、引っ越しの繁忙期は3月中旬~4月上旬まで。しかし、18年はこの期間にある異変が起きた。

 “引っ越し難民”――。
18年に社会問題化した、こんなキーワードをご存じだろうか。物流業界を取り巻く人手不足や長時間労働の問題を背景に、引っ越し各社が受注件数を抑えた結果、通常、閑散期に比べて2~3倍程度だった繁忙期の料金が5倍以上に跳ね上がったり、予約しようにも数カ月待ちの状態だったりと、引っ越ししたくてもできない状況が多発したのだ。今シーズンは大手各社が受注を増やす方向にあるものの、3000社以上あると言われる引っ越し会社の大半を占める中小事業者には課題が残る。

 そこで生まれた業界初の新サービスが、引っ越し業者のトラックの空きスペースをシェアする「Hi!MOVE(ハイ!ムーブ)」だ。引っ越しの一括見積り比較サイトの集客数で業界3位の「引っ越し達人セレクト」を運営するグライド(東京・新宿)が、東京、神奈川、千葉、埼玉エリアを対象に1月18日にウェブサイトを立ち上げた。

Hi!MOVEのウェブサイト

 当初のターゲットは単身者の近距離引っ越し。この層は、1件1台用意する一般的なトラック貸し切り型のサービスでは荷室が埋まらないことが多く、積み合わせすることで効率化しやすい。「空いているトラックのスペースを活用できれば、引っ越し業者の生産性向上につながり、利用者にとっては割安な料金で引っ越しできるようになる」と、グライドの荒木孝博社長は話す。

 当初、Hi!MOVEに参加する引っ越し業者は、ケイヒン引越センターやLIVE引越サービス、ハコブ引越サービスといった中小6社で、最大100台ほどのトラックが運用される。利用者はウェブサイトで引っ越し日、現住所と新住所、間取りを入力し、運んでほしい荷物や部屋の写真をアップするだけ。すると、即座にシェア前提の見積金額と、従来のトラック貸し切り型の料金相場が提示される。これを受け、Hi!MOVEの配車担当者が参加業者のトラックの空き状況を確認。空いていれば希望日に、空きがなければ別日の提案を利用者に電話連絡し、正式な申し込みに進む。利用者にとっては、従来の一括見積り比較サイトのように、電話や対面で複数社の営業担当に荷物の状況を伝える煩わしさがないのが利点だ。

長距離、ファミリー版も検討中

 Hi!MOVE経由の引っ越し料金は、シェア前提で設定されているため、「一般の貸し切り型引っ越しの相場より4割程度安くなる」(荒木氏)のもポイント。そのカラクリの基本は、トラックの空きスペースを埋めることで1台当たりの稼働率や引っ越しスタッフの生産性が上がることにある。Hi!MOVEは利用者が引っ越し「時間」を選べない仕様で、参加業者にとってはマッチングの融通を利かせやすい。場合によってはシェアが成立せず、結果的に貸し切り状態になるケースもあるが、利用者が負担するのはシェア前提の割安料金だけだ。

 また、従来の一括見積り比較サイトを通すと、引っ越し業者にとっては複数社が群がる見込み客への電話・対面営業などの人件費がかかり、相見積もりによる値引き圧力もある。それに対してHi!MOVEは利用者を直接仲介するため、そうした営業・事務経費が抑えられる。参加業者はHi!MOVEに1件当たり10~15%の手数料を支払っても、十分利益を確保できるというわけだ。

 Hi!MOVEで当初提示される見積金額の算定には、比較サイトの引っ越し達人セレクトでたまった数十万件のデータを基にした独自の料金テーブルを活用している。現状、利用者がアップした写真は配車担当者が目視で確認、電話連絡時の聞き取りを加味して最終的な料金が決まる。今後は、画像認識技術などを導入して見積の効率化、精度向上を図るという。また、参加業者のトラックの満空状況などの管理システムもこれから整備される段階で、ひとまずサービスの立ち上げを優先した形だ。

 そのため、ニーズが過度に集中した際、アナログで行うマッチング作業などに不安は残るが、グライドは今シーズンHi!MOVE経由の引っ越しを2月に1000件、3月に2000件規模で見込んでいる。また、今後の展開としてサービス提供エリアの拡大、長距離やファミリー向けサービスの立ち上げなどを予定。利用者からアップされる荷物の写真を活用して、不用品買取オークションサービスなどにつなげていきたい考えだ。

ナイキが“スマートシューズ”発表 スマホでフィット感を調節
注目の経営者&クリエイター 週末はインタビューを一気読み