日経クロストレンドの取材で明らかになった東京急行電鉄の伊豆エリアにおける「観光型MaaS」構想の続報。2019年春に行う実証実験はJR東日本、ジェイアール東日本企画との共同プロジェクトで、楽天も参画する。地方でのMaaS実現に挑む強力タッグが生まれる。

JR東日本のスーパービュー踊り子(写真右)と、東急グループの伊豆急行の車両。伊豆エリアでの観光型MaaSに取り組む

 東京急行電鉄と東日本旅客鉄道(JR東日本)、ジェイアール東日本企画の3社は、9月26日に国土交通省で会見を行い、静岡県の伊豆エリアで「観光型MaaS」の実証実験を19年春に始めることを発表した。日経クロストレンドが9月20日に報じた内容「【特報】東急電鉄もMaaS参戦! 19年春に実証実験スタート」から、今回は具体的な連携企業が明らかにされた形だ。

 JR東日本は、今年7月に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」で、移動のための情報、購入、決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」構想を示した。MaaSにおける国内の最注目プレーヤーであり、同社にとって伊豆エリアは、特急「踊り子」「スーパービュー踊り子」や、リゾート列車の「IZU CRAILE(伊豆クレイル)」を運行する重要な観光地だ。2020年には東京・新宿~伊豆急下田間で新型特急も投入する。そのため、グループの伊豆急行が営業する東急と、伊豆エリアの活性化に向けてタッグを組む話がまとまった。

伊豆エリアの観光型MaaS実証実験のイメージ

 実証実験は、JRの「静岡ディスティネーションキャンペーン」に合わせて行われる。国内外の観光客が、鉄道からバス、タクシー、シェアカー、シェアサイクルといった2次交通へとシームレスに乗り継げるよう専用のスマートフォンアプリを開発。アプリ上でそれらの交通手段の検索、予約、決済を可能にし、マイカーで訪れる以上の快適な旅行体験を提供する構想だ。これにより、日帰りや1泊2日の短期滞在が多い伊豆エリアの周遊を促進し、宿泊日数を延ばす狙い。また、利用者の移動データをアプリで収集し、タクシーを混雑エリアに優先配車するなど、地域交通の効率運用にも役立てる。

 2次交通としては、自治体や現地の交通事業者と連携しながら、新たにAIを活用したオンデマンドバスも導入する予定。乗車ニーズに合わせてリアルタイムで最適なルートを走る乗り合い型バスのイメージだ。朝は地域の高齢者の“足”として、昼間は観光客を乗せて有名スポットを巡るといった観光地ならではの使い分けが期待される。

 今回の実証実験には、楽天も参加する。具体的な役割はこれから調整するとのことだが、プロジェクトに加わっているのは楽天トラベルの担当者だ。楽天会員の送客や伊豆の宿泊施設との連携、モビリティを含めた旅行パッケージ商品の開発などが考えられる。また、楽天はQRコード決済サービス「楽天ペイ」を展開しており、現金払いのみが多い地方タクシーのキャッシュレス化への貢献も視野に入る。

 東急やJR東日本は今後、伊豆エリアだけではなく、北海道や東北といった他の観光エリアでも観光型MaaSの展開を目指すという。地方におけるMaaS実現の一つの理想形をつくれるかどうか、期待される。

一般人が配送 ネスレが「Uber型宅配サービス」を始めるワケ
ヤフーがMaaSの表舞台に 小田急の実証実験に参加した狙い