「データと広告で収益を上げる」──こうした声は、金融の未来を議論するイベント「Money20/20 USA」からすっかり消えた。代わりに増えたのが特定ユーザー向けに特化したサービスで、手数料などの収益を積み上げるビジネスモデルだ。

「Money 20/20 USA」は2018年10月21~24日に開催された

 Money20/20は、「2020年の『お金をめぐる動き』がどうなっていくか」を、業界の壁を越えて思考することを目的に、2012年にスタートしたコンベンションだ。毎年10月に行われる米ラスベガスでの展示会には、今では世界100の国と地域から、4500社の1万1500人以上が参加している。日本からも、金融のみならず、流通、投資、通信関連など、さまざまな業界の企業が参加している。

貧困層や移民者を対象に

 18年のテーマの中で興味深かったのは、特定のユーザー向けの特化型ビジネスモデルのサービスが増えてきたことである。例えば、「デジタル世代とも呼ばれるミレニアル世代」「銀行口座やクレジットカードが持てず、お金を借りる信用がない貧困層」「海外送金をする必要があるのに、信用情報が積み上がるまで金融サービスを使えず苦労する移民や一時滞在者」などがターゲットである。この3つの層をターゲットとしたサービスは特に、モバイルアプリで簡単に手続きを行うことができる金融サービスが目立った(関連記事「米ミレニアル世代向けFinTechに3つの新潮流 日本にも波及必至」)。

 GoogleやFacebookのような一般消費者向けや限られた富裕層向けのサービスは、大手を含めて競争が激しい。それに比べて特化型サービスは、ロイヤルティーの高いユーザーを獲得することが可能である。そうしたユーザーのニーズをとことん理解し、寄り添い、彼らの課題を解決するために最新のFinTechを活用し、サービスを展開する企業が増えてきた。

 今まで、このような層をターゲットとするサービスは、「ニーズが細分化されてビジネス対象にはしにくい」とか「リスクが高くて収益性が低いのでは?」と敬遠されがちだった。しかし、リスク予測などのデータ分析技術がAIで進化し、ターゲットの行動や心理の理解が進んでデジタル世代を引きつけるUI/UXが実現可能になり、事業の成立、そして成長が見込めるようになった。その結果、こうした企業に投資も集まっている。

 これらの企業は手数料や利息などを細かに積み上げており、ビジネスモデルが多様化しているようだ。一方で、広告やデータ販売を収益の要とする例がほぼなかったことが興味深い。広告とデータ販売にはユニークさもなく、投資も興味も集まらないという現実を見た気がする。