顔認証は原則として静止画像を用いた認証技術だが、顔の「動画」映像を画像解析で分析し、被写体の心理状況、特に犯罪傾向を検知する技術もある。この技術を用いた不審者検知ソフト「DEFENDER-X」の内容と予想される法的な問題について、元セキュリティーエンジニアの高橋喜一弁護士が取材した。

 人の顔をAIが分析・解析する技術として顔認証が普及しつつあり、既にスマートフォンやパソコンなどの本人認証に用いられて久しい。実際、大阪メトロ(大阪市高速電気軌道、大阪市)は、顔認証で改札を通過できる「顔パス」を2025年までに導入すると発表済みだ。

 こうした顔認証技術とは別に、人物の状態を識別する技術がある。ELSYS JAPAN(東京・品川)が、このユニークな技術を用いて、被写体の動きから不審者の精神状態を検知する不審者検知ソフト「DEFENDER-X」(※1)を発売している。

Q1 DEFENDER-Xとはどのような商品か。

A1 簡単に言うと、防犯カメラで撮った映像をリアルタイムに解析し、緊張状態などを検知した場合に、警備員が持つ端末にその旨をアラートすることができる不審者検知ソフトである。

DEFENDER-Xの公式サイト
DEFENDER-Xの公式サイト

Q2 どのような技術を用いているのか。

A2 人の表情や動きには、たとえ平静を装っていてもその心理状況を表すかすかな動作が生じている。これは人間の目ではよく分からないが、一定の規則性があるため、その動きを画像解析で分析することにより、その動作がどのような心理状況を示しているのかを導くことができる。10万人以上の分析データを基に人の動きをパターン化して、人間特有の身体全体の振動回数や大きさを可視化している。

Q3 精神状態はどのように可視化できるのか。

A3 例えば、平静を装っている人物でも、かすかな動きを増幅して映像化することによって、ストレス、恐怖、攻撃性などの兆候を検出することができる。

Q4 どのような場所で活用されるのか。

A4 守秘義務があるので明かすことはできないが、日本国内で、多くの人が集まる場所で多数の導入事例があり、実際に不審者の検知が行われている。例えば数千人から数万人が集まるような場所では、警備員の数にも限界があり、また犯罪者も自ら不審者であるようなそぶりをとらないので、警戒するのにも限界がある。

 しかし、本ソフトを用いれば防犯ビデオ映像からリアルタイムに不審者を検知できるので、警備員はその人物中心にマークすればよく、警備効率が大幅に上昇する。

 そうであるならば、例えば競技場やコンサート会場、量販店、工場、公共交通施設など様々な場所での活用が考えられる。オリンピックイヤーである2020年には、想像以上に多くのDEFENDER-Xがあちこちに配備されているのかもしれない。

Q5 国内での導入事例はどんなところか。

A5 これも具体的な企業名は明かせないが、様々な現場で導入されている。例えば法律事務所で導入実績があり、来訪者の中に攻撃性のある人物がいないかを防犯ビデオ映像で検知している。また、小売店が万引きしそうな人物のマークに用いたり、興業施設が来場者の中で体調の悪そうな人を発見するのに役立てたり、活用の方法は千差万別だ。

 実際に、システムが検知した不審者を現場でマークすると、高い確率で問題人物にあたるらしい。

 取材中、導入企業が公開を了承した記録映像を見る機会を得たが、書店に買い物に来ている多数の客の中から、DEFENDER-Xが1人の人物を不審者とマークした数分後に、その人物が他の客のスカートの中を盗撮するという事件が記録されていた。通常、人では分からない微細な動作からそこまで検知できるのかと少し驚いた。

 他には、量販店でマークした客が他の客とけんかを始めるなど、不審者(犯罪性向の高い人)を幅広く検知できている様子がうかがえた。

 コンプライアンスの観点からは、セクハラやパワハラだけでなく、横領や背任などの不正の検知も可能かもしれない。値段を聞いたところ、一般企業でも導入できない価格では決してないので、試してみる価値はあるように思われる。