書籍『マーケティングプロフェッショナルの視点』発刊を記念した連載の番外編は、コンサルの“プロフェッショナル”と呼ばれる早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏と音部大輔氏の対談。プロフェッショナルの条件を語り尽くした。「戦略の左脳」と「本能の右脳」で議論は盛り上がった。

音部大輔氏(左)と早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏。互いの著書である『マーケティングプロフェッショナルの視点』(音部大輔著)と、『右脳思考』(内田和成著)を手に
音部大輔氏(左)と早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏。互いの著書である『マーケティングプロフェッショナルの視点』(音部大輔著)と、『右脳思考』(内田和成著)を手に

 プロフェッショナルとは何だろうか。愚直に心血を注ぎ続け、特定の領域で活躍し続ける人々をそう呼ぶが、プロフェッショナルとそうでない人との境はあいまいだ。このほど、書籍『マーケティングプロフェッショナルの視点』を上梓(じょうし)した音部大輔氏は、プロフェッショナルに関する問いを掘り下げるため、コンサルの“プロフェッショナル”と呼ばれる早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏のもとを訪れた。内田氏は自著『右脳思考』の中で、一流人材はロジカルシンキング以上に“勘”で仕事をしていることを説いている。

プロフェッショナルは結果がすべて

音部大輔氏(以下、音部) プロフェッショナルを定義するとしたら、内田先生はどうお考えになりますか?

内田和成氏(以下、内田) 私は「結果がすべて」だと思っています。ときどき年収額で優劣を語る人がいますけど、年俸額の高いプロバスケットボール選手でもシュートが決められなければプロフェッショナルとは言えません。アシストが悪かったとか、言い訳をするのもプロじゃない。

音部 チーム戦であっても、チームの結果が個人の結果ということですか?

内田 そう思いますね。料理人が「今日は火力が弱かった」「スタッフがミスをした」なんて言い訳をしていたら嫌じゃないですか。いや、その状況の中でも最善を尽くすのがあなたの仕事でしょうと。

音部 そう思うと、企業のビジネスパーソンも一種のチーム戦ですよね。

内田 組織で働いていると、上司に恵まれない、メンバーに恵まれないということも現実問題としてあると思います。それでも本質的には同じです。「チームでこれだけやります」と組織に約束したことを果たせるかどうか。日本には社員をクビにする文化があまりないけれど、本来はビジネスパーソンも結果がすべてなはずです。

音部 ビジネスパーソンでも、上のレイヤーになればなるほど、結果がすべてのプロスポーツ選手みたいになっていきますよね。生々しい話ですけど、たたき上げの役員は別として、プロフェッショナルとして呼ばれているCMO(最高マーケティング責任者)やCTO(最高技術責任者)といった「CXO」は、年間契約ということも多いですから。

内田 それって、コンサルにも近いですよね。その道のプロフェッショナルを呼んで、結果が出なかったらバイバイという。

音部 結果をどう捉えるかですよね。経営層であれば失敗は失敗ですが、若手や中間層であれば、失敗は成長の資源として使うことができる。1回の失敗でアウトにしちゃうのはもったいないと考えることもできます。

内田 ちなみに「マーケティングの失敗」って分析できるものなんですか? 戦略が悪かったのか、人の問題なのか、オペレーションの問題なのか。

音部氏は再現性のある人材育成のために、「いいマーケターとは」を定義することを勧める
音部氏は再現性のある人材育成のために、「いいマーケターとは」を定義することを勧める

音部 何をもって失敗と呼ぶかというのはありますが、多くの会社にはそもそも「いいマーケター」の定義がないですよね。アイデアマンなのか、ヒット商品を作った経験なのか。再現性のある人材育成をしたいなら、「プロフェッショナルとは」の命題とともに「いいマーケターとは」も定義しないといけないですよね。

 P&G時代は、ロジカルシンキングができて戦略立案ができること、リーダーシップを取れること、ファイナンシャルが分かること、対人コミュニケーションができること、加えて調査のような具体的なマーケティングスキルがあることなどが、いいマーケターとして評価されていました。

内田 あてがわれたプロジェクトそのものの善し悪しもあると思いますが、その中でも個人の能力は見えるもの?

音部 見えるものです。それに何年か一緒に働いていると、どんな事象が起こっても「○○さんっぽい戦い方だね」と、姿勢に差が出てくるんですよね。モノが悪かったから売れなかったって、かっこ悪いじゃないですか。だから内田先生の言う「結果がすべて」というプロフェッショナルの定義は分かりますね。

内田 そんなことを言っておいて、コンサル業はその点が難しいんですよね。コンサルは第三者であって、実行者はクライアント。実行の有無にまで立ち入れないことが多いんです。敗因はクライアントが実行していないことなのに、結果が出ていないからと切られてしまう。なんともわびしい商売です。