完全会員制レストランの「29ON(ニクオン)」、日本初の定額制コーヒースタンド「coffee mafia(コーヒーマフィア)」など、飲食店にデジタルマーケティングのノウハウと斬新なアイデアを持ち込み、画期的なビジネスモデルを次々と生み出しているのが、2015年創業のスタートアップ、favyだ。同社を率いる高梨巧社長に飲食業界の“アップデート”に懸ける思いを聞いた。

favyの高梨巧社長。19歳で起業し、上場企業からスタートアップまで、のべ1000社以上とビジネスを創造してきた「企画屋」。現在はfavyのファウンダー&CEOとして、「飲⾷店が簡単に潰れない世界」をつくるべく奔⾛している

今は飲食業で革新的なビジネスモデルを続々と立ち上げていますが、もともとはデジタルマーケティング畑の出身です。

高梨巧氏(以下、高梨)  私は高卒で起業を経験した後、就職した会社が当時、デジタルマーケティング分野でトップランナーのアイレップでした。平均勤続年数は2年以下と恐ろしく人の回転が速い会社で、学歴は一切関係なく、チャンスだけは誰にでも平等にある世界。私はまだ日本でデジタルマーケティング業界が立ち上がったばかりの草創期にタイミング良く入ることができ、外資系企業の巨大なサービスのローンチをすべて任されたり、大手メーカーの数百億円規模の商品プロモーションに携わったりするなど、業界トップクラスの大規模プロジェクトを手掛ける幸運に恵まれました。

ただ、絶頂の時に業界から抜ける決断をされました。

高梨  アドテクノロジーの仕事に飽きが来ると同時に、限界を感じたことが主な要因です。あるとき、クライアントから数十億円の予算を自由に使っていいと言われ、デジタルマーケティングより効率的に事業を拡大させられるM&Aを提案したところ、土壇場で却下されてしまった。当たり前ですが、広告代理店の立場では踏み込めない領域があると痛感させられたのです。であれば、自らが事業主体となって、ゼロベースから大きなビジネスを展開してみたい。そんな衝動に駆られ、会社を辞めて起業したわけです。

favyの高梨社長

門外漢の飲食業界に転じた理由は?

高梨  飲食業界では、これだけ世の中の隅々まで普及しているデジタル広告が全くと言っていいほど、活用されていなかったからです。試しにGoogleで「新宿 焼肉」と検索すれば分かるのですが、検索結果ページの最上部にGoogle広告(リスティング広告)が全く表示されません。結果、検索の上位には食べログやホットペッパーなどが表示され、ユーザーの多くをグルメサイトが持っていくという構図です。飲食店はグルメサイトに登録料を支払い、さらにクーポンまで発行して顧客を集めているのが現実。クーポンなど発行せず、Google広告を出せば、集客も収益も改善される可能性が高いのにです。これでは、儲けが出ないのは仕方がないと言わざるを得ない。ホテル業界がGoogle広告に力を入れているのとは大違いです。

 結局、飲食業界では、料理と接客だけで勝負するのが美徳とされ、マーケティングをあまりにも軽視し過ぎている。デジタル全盛の時代に取り残された飲食店を、現代のテクノロジーを使えるように“アップデート”すれば、今までとは全く異なるビジネスモデルが作れるのではないか。そんな野望を抱き、自分がその担い手として挑戦したいと思い立ったのが、飲食業界に飛び込んだ大きな理由です。