ヤフーからグーグルに転職し、YouTubeの日本代表に。当初、著作権利者との間で、多くの問題を抱えていたYouTubeの、日本でのビジネスの確立に大きな役割を果たしたのが水野有平氏だった。テクノロジーとグローバリゼーションが急速に進む昨今も、日本の現在のビジネスの考え方は「当時と変わっていない」と考えている。日本の企業が陥りがちな失敗は何か、また、マーケティング担当が大変革のこの時代になすべきことは? ネットビジネスとテクノロジーの最先端を見続けてきた立場から語ってもらった。

元YouTube日本代表、グーグル執行役員。作詞作曲家。2007年にヤフーからグーグルに転職し、YouTubeのグローバルリーダーシップの一員として、日本における戦略、マーケティング、収益化、パートナーシップ、新規案件など、事業戦略の立案と実施の責任者を務める。07年「日経エンタテインメント!」の「時代を動かす100人」に選出。一橋大学大学院(ICS)修了。現在、PwC Japan グループ デジタル最高顧問。野村ホールディングス経営企画部シニアエグゼクティブアドバイザー

YouTube時代から、デジタル化やネットワーク化では世界の第一線に立つ水野さんですが、現在の日本のビジネスのデジタル化をご覧になって、どのように思われますか?

水野 やはり「歴史は繰り返す」ということですね。僕がYouTubeに携わったのは、10年以上前のことです。話としては昔ですが、今、別の立場から他の業界と関わっていると 、非常に似たようなことが起きていると感じます。

 例えば、ブロックチェーンの例でお話しすると、この技術の元は、P2P技術なわけです。ちょっと話を簡略化しますが、YouTubeが出る前のコンテンツ業界って、NapsterやGnutellaに代表されるP2Pサービスが出てきて、それに対してアメリカレコード協会(RIAA)が著作権侵害で戦っていた。その後、「レコード会社がデジタルの領域で何もしないから、そういうサービスが出てくるのだ」という批判を受けて、自らがサービスを立ち上げたわけですが、競合同士のレコード会社が、それぞれ派閥のようにグループを作って始め、さらに、サービスごとに異なる技術(DRM・・・著作権管理技術)を採用したものだから、ユーザーにとってはとても不便で、市場ができなかった。そこにアップルなど、異業種の企業が参入し、レーベルの壁を越え、DRMの壁も越えたサービスへと進化させ、大きなユーザーの支持を集めた。それらの流れの中で、業界のバリューチェーンが大きく変化してしまった。

 そして今。そのP2P技術は、ブロックチェーンへと進化。今、金融業界は、やはり、それぞれのプレーヤーごとに取り組みを進めている。私が懸念しているのは、今後、業界内派閥争いで、使い勝手の悪いサービスが生まれていくのではないか。そして、規制でうまく戦わないと、また海外からすべてを統合するようなサービスが出てきてしまうのではないか、ということです。こうした動きは、他の先端デジタル技術周りや、他のさまざまな業界でも起こっていくように思います。

 僕が今、アドバイザーの仕事をしている理由も、まさに、そこにあります。今の立場ですと、いろいろな業種の方々とお話ができる。その中で、より戦略的なテクノロジーの活用や、新規事業の立案について、お伝えしていけたらと思っています。

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