ルミネのアジア出店について、仕掛け人の新井良亮相談役が明かす第3回。2018年にオープンしたルミネジャカルタには常駐の社員を置かず、日本の海外事業部の社員が体当たりでやっているという。

18年12月7日にオープンしたばかりの「ルミネジャカルタ」
18年12月7日にオープンしたばかりの「ルミネジャカルタ」

 本連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか、どのように磨けばいいのかについて、成功談も失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。

 今回も前回前々回と同様、ルミネの相談役である新井良亮さんに登場いただきます。JR東日本の副社長を務めた後、ルミネの社長から会長を経て相談役に。新しい施策を次々に打ち出し、ルミネの業容を広げてきました。新宿駅南口にある「ニュウマン」もその一つ。「ルミネ」とは異なる小売業態として世に出し、すでに20年の横浜駅での大規模出店も決まっています。

 また、17年にシンガポール、18年にはインドネシアのジャカルタで、日本ブランドをセレクト展開した「ルミネ」ショップを開きました。多くの小売業がアジア出店を控えたり撤退を図ったりしている中、ルミネはあえて打って出たのです。

 前回は主に「ルミネシンガポール」について聞きましたが、今回は日本から進出しているファッション企業が少ないジャカルタ出店について、ルミネが何を目指しているのか。新井さんの「勘」と「感」を聞いてみました。

ルミネの新井良亮相談役は日本国有鉄道に入社し、電車運転士や新宿駅、渋谷駅で勤務した後、国鉄とJRの人事関係業務に約20年携わる。1987年、国鉄分割民営化によりJR東日本に入社。東京地域本社の事業部長、本社常務取締役を経たのち、エキナカやウオータービジネスなどさまざまな新規事業を立ち上げる。2009年代表取締役副社長・事業創造本部長に就任。11年ルミネ代表取締役社長を兼務、12年JR東日本副社長を退任。17年ルミネ取締役会長に就任。18年同社取締役相談役に就任
ルミネの新井良亮相談役は日本国有鉄道に入社し、電車運転士や新宿駅、渋谷駅で勤務した後、国鉄とJRの人事関係業務に約20年携わる。1987年、国鉄分割民営化によりJR東日本に入社。東京地域本社の事業部長、本社常務取締役を経たのち、エキナカやウオータービジネスなどさまざまな新規事業を立ち上げる。2009年代表取締役副社長・事業創造本部長に就任。11年ルミネ代表取締役社長を兼務、12年JR東日本副社長を退任。17年ルミネ取締役会長に就任。18年同社取締役相談役に就任

ルミネがセレクトショップを自主運営

川島 「ルミネジャカルタ」は18年12月7日にオープンしたばかり。先日、取材で行ってきたのですが、ルミネが大きなショッピングセンターの中のセレクトショップとして出店していて、日本のルミネとの違いに驚きました。

新井 シンガポールと同様、日本のファッションブランドをセレクトし、VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)をはじめ、集客・接客のノウハウも含めて、ルミネが自主運営する試みを行いました。インドネシアは急速な発展途上を遂げている国であり、潜在的な需要が大きいと感じたからです。レディスファッションを軸に、メンズファッション、ライフスタイル雑貨、カフェをそろえ、ルミネ独自の視点による「TOKYO MOOD」を発信するコンセプトショップを作りました。ただ、シンガポールとインドネシアでは、政治経済も含めた環境が大きく異なるので、交渉から実施まで、随分と手間暇がかかりました。

川島 ルミネジャカルタは大規模なショッピングセンターがひしめき合っているタムリン地区にある「Plaza Indonesia(プラザインドネシア)」の5階に位置しています。服と雑貨とカフェの複合ショップで1200平米もあり、ジャカルタでほとんど見かけない業態。ショッピングセンターの中でも先駆的な存在なのでしょうね。

新井 あのショッピングセンターは1990年にオープンして以来、ジャカルタの中でも高い評価を得ているところ。「顧客と取引先であるテナントに最善を尽くす」というオーナーが持っている価値観がうちと一致していることから、好奇心旺盛なジャカルタの人たちに日本の新しいファッション文化を提案することで、商業施設全体を一緒に良くしていこうと話しているのです。

川島 ジャカルタの街中はバラックのような建物が並んでいる一方で、ラグジュアリーブティックが軒を連ねる豪勢なショッピング街もあります。タムリン地区は後者に属しているのですが、その格差たるや日本では想像できないものと感じました。また、道は常に渋滞していて、2人乗りでなく3人乗りしているバイクや荷台に人がぎゅうぎゅうに乗っているトラックもあれば、豪勢なリムジンカーや外車で移動する人もいます。成長している国ならではのエネルギーは今の日本にはないものだと思いました。

新井 ああいう状況を見て、これからのファッション市場では「中間層」が大きく伸びていくと私は見ているのです。そして日本はアジアファッションの先端を担っているとともに、ジャカルタには日本ファッションに憧れを持っている層もいることから、開拓の余地はあると捉えています。

第37回
シンガポールのルミネが現地客に好評 「中間層」に大きな可能性
第39回
「30年先を“見える化”する」を当たり前にやるのが経営だ