日清が自社ECに力を入れる理由

 この商品のもう一つの大きなポイントは、EC限定商品ということ。完全食はまだアーリーアダプターが中心なので、マスの売り場に並べるよりも欲しい人が買いやすいECのほうが合っていると判断したそうだ。

 実は日清はここ最近、自社ECに力を入れている。「自社EC強化の最大の狙いは、350くらいある自社商品をいつでも全国から買いやすくすること。16年9月のリニューアルを機に1食分から買えるようにし、1年前から法人向けの大量販売を始めた」(同)。

日清食品グループのオンラインストア。ギフト向けにカップヌードルを束ねてブーケのように販売する「ヌードルブーケ」などユニークなEC限定商品も
日清食品グループのオンラインストア。ギフト向けにカップヌードルを束ねてブーケのように販売する「ヌードルブーケ」などユニークなEC限定商品も

 1食売りはネットで気になって買いたくなってもどこに売っているか分からない、あってもケースでは買いたくないという需要に応えるもの。賞味期限が残り3カ月を切った商品は3割引からスタートし、直前のものは5割引と激安で販売するアウトレットセールも人気だという。平均客単価が3000円程度で、7割がバラ購入だという(送料はいくら買っても320円、ケース買いの大量購入は無料)。

賞味期限が残り少なくなった商品を激安で販売するアウトレットセールも人気
賞味期限が残り少なくなった商品を激安で販売するアウトレットセールも人気

 会員数は非公表だが、16年9月のリニューアルを機に1年で10万人ずつ増えているという。30~40代がトップで35%程度、65%がモバイルからのアクセスだ。メルマガの開封率が20%前後と高いのは、アクティブな会員が多い証拠だろう。

 なかでも、新商品を発売日の2週間前に販売する「フライングゲット」が好評。スタートしてから約2年半たつが、ほぼ毎週実施。数百個用意した商品が数時間で売り切れるという。同社ではAIを活用し、フライングゲットの売れ行きを一般販売の初週の売れ行き予測に活用している。「始めてから2年半のデータの蓄積によって両者の相関性が見えてきた。まだまだ改良の余地はあるが、将来的には販売予測や生産計画に役立てていきたい」(同)。

 これまでは商品開発・販促とシステム運営(マーケティング部のECグループ)と健康食品開発チーム、営業部内の顧客サービスや在庫を管理する部署の3つが分かれていたのを、この3月にダイレクトマーケティング課に統合。これによって、商品を作る際に配送コストを最も低く抑えられるサイズや仕様をベースに商品設計を行うなど、発送形態から商品企画を考えるような試みができるようになったという。

 「これだけいろいろなことができるのは、トップダウンで直販強化戦略を進めているから。それがないと、既存流通という取引先があるなかでなかなかできない」(同)。今後は(1)NB商品の拡販(2)法人販売(3)EC専用品の開発(4)健康食品の原料販売の4軸を強化していくという。今回の商品は(3)のEC専用品にあたる。

ダイレクトマーケティング課を率いる佐藤真有美ブランドマネージャーは5年前に日清食品に入社。その前はマイクロソフトでeコマースのチャネルマーケティングを担当していたという。3年前から国内ECの担当になり、リニューアルの指揮をとってきた
ダイレクトマーケティング課を率いる佐藤真有美ブランドマネージャーは5年前に日清食品に入社。その前はマイクロソフトでeコマースのチャネルマーケティングを担当していたという。3年前から国内ECの担当になり、リニューアルの指揮をとってきた

 一方、2アイテムとも話題になりながらも目標予約数に達しなかった同社のクラウドファンディングプロジェクト「PRODUCT X (プロダクト・ペケ)」も自社ECの新たな取り組みの一つ。「クラウドファンディングはECの認知拡大と会員への楽しさ提供が目的だったが、実現可能性と損益計算をしっかり確認したうえで出した」(同)。ただ第1弾の麺すすり音カモフラージュ機能搭載フォーク「音彦(おとひこ)」は1万円超と高すぎ、「日清焼そばU.F.O.」のふた裏のキャベツを除去する「キャベバンバンCBB-001」は900個で達成だったのに惜しくも827個しかいかなかった。次は必ず商品化すべく、商品企画を慎重に進めているそうだ。

「PRODUCT X」第1弾の麺すすり音カモフラージュ機能搭載フォーク「音彦(おとひこ)」はユニークな発想で話題となったが、1万円超と高すぎたせいか、目標予約数に達しなかった
「PRODUCT X」第1弾の麺すすり音カモフラージュ機能搭載フォーク「音彦(おとひこ)」はユニークな発想で話題となったが、1万円超と高すぎたせいか、目標予約数に達しなかった

(写真/山下奉仁)