垂直離着陸が可能な次世代モビリティ「空飛ぶクルマ」が、世界で注目を集めている。国内でも、政府がロードマップを策定するなど、実現に向けた動きが本格化。日本発の空飛ぶクルマとして知られる「SkyDrive(スカイドライブ)」が羽ばたく日はいつなのか。どんな移動社会が生み出されようとしているのか、最新動向を追った。

カーティベーターが開発する空飛ぶクルマのイメージ(提供:株式会社SkyDrive)
カーティベーターが開発する空飛ぶクルマのイメージ(提供:株式会社SkyDrive)

 「空飛ぶクルマ」と聞いてSFの世界を思い浮かべる人も多いだろうが、実はそう遠くない将来、日本でも現実の移動手段として羽ばたこうとしている。

 政府が2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」で掲げた次世代モビリティ・システムの構築に向けた新たな取り組みのなかで、モビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」などと共に、世界に先駆けて空飛ぶクルマの実現を目指す方針を示した。早速8月には、経済産業省と国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を共同で立ち上げ、11月16日に行われた第3回会議において、技術開発やインフラ・制度整備に向けたロードマップの素案を作成。空飛ぶクルマを新たな産業に育てようと本腰を入れている。

 一方、民間では大手企業やスタートアップが入り乱れ、今や世界120社以上が開発競争を繰り広げている。2020年の試験飛行を目指す米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズを筆頭に、航空機大手のエアバスとアウディ連合、英ロールス・ロイス、米グーグルを傘下に持つアルファベットCEOのラリー・ペイジ氏が出資するキティ・ホークなど、そうそうたるプレーヤーが空飛ぶクルマに名乗りを上げている。

 そんななか日本発の取り組みとして世界で羽ばたこうとしているのが、有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)が開発する空飛ぶクルマ「SkyDrive(スカイドライブ)」だ。12年から活動を始め、現在は ⾃動⾞メーカーや航空業界、スタートアップなどに所属する有志が100⼈ほど集まって活動を継続している。トヨタ自動車出身でカーティベータ―の共同代表を務め、18年10月に設立した事業会社、SkyDriveの代表取締役である福澤知浩氏は、「目指すのは2050年までに誰もがいつでも空を飛べる時代を創ること」と話す。

試作中のスカイドライブと、開発メンバー。前列右から2人目が福澤氏(提供:株式会社SkyDrive)
試作中のスカイドライブと、開発メンバー。前列右から2人目が福澤氏(提供:株式会社SkyDrive)

 14年には5分の1スケールの実験機「SD-00」を開発し、18年5月には2号機となる実物大モデルの「SD-01」を公表した。その間、トヨタグループをはじめNEC、パナソニックなど、さまざまな企業からの出資や技術協力を得ながら急ピッチで開発を進め、19年夏には屋内における有人飛行テストを行う構え。そして東京五輪が開催される2020年、屋外での試験飛行にこぎ着け、聖火台への点灯を目指すとしている。

 欧米では固定翼があるタイプの空飛ぶクルマの開発も進んでいるが、「長距離を飛べる半面、機体が大きくなり、陸上で走れる場所や着陸する場所が限られてしまう」(福澤氏)。そのため、スカイドライブは機体の四隅に8つのプロペラを配置した2人乗り・世界最小サイズの実現を目指している。ちょうどドローンを大型化したものに人が乗るイメージだ。電動駆動で排気ガスゼロ、騒音を抑えており、滑走路なしでもコンビニの駐車場2台分のスペースがあれば垂直離着陸できるから、究極のところ街中でも運用可能になる。「例えば、現在のビルの屋上は5t以上の機体重量があるヘリコプターの離発着に耐えられる仕様のところはまだ少なく、移動サービス面では大半が未活用のまま。スカイドライブは最大離陸重量を400㎏に設定しており、これなら既存のビルの屋上を移動拠点として有効活用できる」(福澤氏)という。

空飛ぶクルマ実現のときは、目前に迫っている(提供:株式会社SkyDrive)
空飛ぶクルマ実現のときは、目前に迫っている(提供:株式会社SkyDrive)

 バッテリーの進化などにもよるが、スカイドライブは年間数台規模の生産を目指す23年の時点で、飛行時の最大時速100㎞、飛行距離にして20~30㎞程度を予定している。機体価格は当初スーパーカー1台分、4000万~5000万円程度がターゲット。量産化が進めば半額以下に引き下げていくことも可能で、ヘリコプターに比べて燃料やメンテナンスなどのコストも低い。2030年代以降は空飛ぶクルマの自動運転化も進むとみられており、移動サービスとしては将来的にタクシー並みの料金を期待できるだろう。