※日経トレンディ 2019年7月号の記事を再構成

J1優勝8回、史上初の3連覇、前人未到の20冠……常勝軍団の鹿島アントラーズはビジネスマネジメント力ランキングで2位に入った。スタジアムの立地が圧倒的に悪いにもかかわらず、18年度の売上高は70億円超え。その裏には、一歩先んじた戦略があった。4本目の柱として打ち立てた「スタジアムビジネス」の中身を探る。

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鹿島は「ビジネス力」で2位に 地方で70億円超を稼ぐワケ(画像)
本拠地:県立カシマサッカースタジアム(収容人数3万7496人)
平均入場者数:2万467人
集客率:50.1%
売上高:52億2800万円
スポンサー数:89社
SNSフォロワー数/
 Twitter:約40万9000人
 Facebook:約6万6100人
 Instagram:約11万2000人
注)平均入場者数、集客率は2017年。売上高は17年度。スポンサー数、SNSフォロワー数は19年5月24日時点の数字

 J1優勝は最多の8回。2007~09年には、史上初の3連覇を達成し、昨年はACL(AFCチャンピオンズリーグ)で悲願の初優勝を果たした。前人未到の20冠目のタイトルを手に入れた常勝軍団が、鹿島アントラーズだ。

【ココを見ろ!】 選手 
「出戻り」を有言実行! 生え抜きがチームの軸
 強豪らしく代表経験者が多い。ユース出身やアントラーズからプロ入りした生え抜き選手が活躍し、費用のかかる超大型選手の獲得は行わない。かねてより「鹿島に戻る」と宣言していた内田篤人は昨年ドイツから8年ぶりに復帰。20歳、安部裕葵は今年からエースナンバー背番号10を任された期待の若手。コパ・アメリカ2019ではA代表にも初選出された。
(左)DF 2 内田篤人 (右)FW 10 安部裕葵
(左)DF 2 内田篤人 (右)FW 10 安部裕葵

 経営面でも、17年度の売上高は約52億円で、これは1位の浦和レッズ、2位のヴィッセル神戸に次ぐ額。ビジネスマネジメント力ランキング(連載1回目の記事:「Jリーグ55クラブのビジネス力をランキング 2位は鹿島、1位は?」)でも、客単価やグッズ関連利益額など、ほぼすべての項目で上位3番目以内に入り、総合2位となった。

 アントラーズは圧倒的に立地が悪い。スタジアムから半径30km以内のコアマーケットの人口は僅か78万人で、首都圏のビッククラブの30分の1にも満たないほど少ない。昨年のJリーグスタジアム観戦者調査では、スタジアムまでのアクセス時間が、53.7分のリーグ平均に対し、アントラーズは95.8分と断トツの最下位だ。

 周辺環境の悪さから、リーグ発足時には初代チェアマン・川淵三郎氏に「初年度の加盟は99.9999%不可能」とまで言われた過去を持つ。しかし、観光資源の乏しい地元にプロのサッカーチームをつくりたいという思いは強く、サッカー専用スタジアム(県立カシマサッカースタジアム)を急ピッチで建設。ブラジル代表で活躍した“神様”ジーコの獲得という奇跡もあり、リーグ発足に間に合った。

 生き残るには勝ち続けるしかない。そのためには確実に収益を伸ばしたいが、入場料収入や広告料収入が他のクラブほど見込めない。そこで、ビジネス面では一歩先んじた戦略を立てる必要があった。サッカークラブの営業収入の柱は、広告料収入、入場料収入、権利収入の3本だが、4本目の柱として「スタジアムビジネス」を打ち出したのだ。

スタジアムに独自名物グルメやヘルスケア施設も

 アントラーズはJリーグで初めて、06年にスタジアムの指定管理者権を取得。スタジアムの所有者は茨城県だが、クラブが自由に活用できる体制を整えた。プロ野球では本拠地の球場を所有するか、指定管理者権を持っている球団がほとんどだが、Jリーグでスタジアムの運営権を持つクラブは数少ない。メリットは、独自にイベントを開催でき、コンコース内で調理を行う飲食店も設置できること。他には無い名物スタジアムグルメも生まれた。