アスクルが手掛けるBtoCのECサイト「LOHACO」が急成長している。この6年で売上額が約25倍に拡大。購買データなどをメーカーに公開し、30~40代女性の心をつかむ独自商品を共同開発する取り組みが効果を上げている。ビッグデータとデザインを両輪に国産ECサイトとして進化を続ける。

「LOHACO EC マーケティングラボ」のキックオフミーティングを2019年4月16日に開催。大手メーカーなど140社の担当者が参加した
「LOHACO EC マーケティングラボ」のキックオフミーティングを2019年4月16日に開催。大手メーカーなど140社の担当者が参加した

 アスクルの消費者向けECサイト「LOHACO」の売上高が、2019年5月期に前期比23%増の513億円に達した。サイトがスタートした13年以降、順調に拡大してきた。その原動力となっている施策が2つある。1つが、「LOHACO EC マーケティングラボ」(以下、ラボ)であり、もう1つが会員企業の一部が参加し、毎年開催する「暮らしになじむ LOHACO展」だ。

2019年5月期の売上額は同年5月度月次業績による
2019年5月期の売上額は同年5月度月次業績による

 LOHACOの主なターゲットは、30~40代の女性。ラボでは、会員企業に対してLOHACOユーザーの購買データはもちろん、顧客の属性や検索などのアクセスログ、商品についてのカスタマレビューなどのデータを公開している。会員企業は、自社だけでなく、他社のデータも閲覧できる。同じ業界のライバル企業であっても例外ではない。

 「自社ブランドだけでなく競合ブランドや他のカテゴリーをひも付けて分析することで、ターゲットのライフスタイルやニーズを多角的に把握できる」と同社BtoCカンパニープラットフォーム本部ビジネスマネジメント&アナリティクス統括部長ECマーケティングディレクター、成松岳志氏は話す。

アスクルBtoCカンパニープラットフォーム本部ビジネスマネジメント&アナリティクス統括部長ECマーケティングディレクター  成松岳志氏
アスクルBtoCカンパニープラットフォーム本部ビジネスマネジメント&アナリティクス統括部長ECマーケティングディレクター  成松岳志氏

ビッグデータ分析でレトルトカレーがヒット

 貴重なビッグデータをマーケティングや商品開発に活用できることから、ラボの参加企業は毎年増えている。ラボを立ち上げた14年の会員企業は12社だったが、現在は140社にまで膨らんだ。

 19年4月16日に都内のイベントホールで開催したラボのキックオフミーティングには、花王やアサヒビールをはじめとした国内メーカーのマーケティングや商品企画の担当者が一堂に会した。その数、約500人。ヒット商品のヒントを得ようと真剣なまなざしで登壇者の声に耳を傾けていた。  

 アスクルは、ユーザーの購買行動やニーズを反映したデータを提供する他、勉強会やワークショップを頻繁に開催し、データの分析から商品企画へ生かすまでのノウハウを伝える。それによって、他のECサイトにはない独自商品を会員企業と共同で開発してきた。これらの独自商品が、LOHACOユーザーにとって大きな魅力になっている。

会員企業に公開しているLOHACOのデータ
会員企業に公開しているLOHACOのデータ

 実際、アスクルと会員企業がビッグデータを活用して共同開発したヒット商品がいくつも生まれている。例えば、17年11月からLOHACO限定で販売しているハウス食品のレトルトカレー「ペパー香る!バターチキンカレー」はその1つ。一般に、レトルトカレーの購買層は、50~60代の男性が中心。同社は、新規ユーザーを開拓するため、LOHACOユーザーである30~40代の女性に支持されるレトルトカレーを開発することにした。

ロハコで限定販売したハウス食品のレトルトカレー「ペパー香る!バターチキンカレー」
ロハコで限定販売したハウス食品のレトルトカレー「ペパー香る!バターチキンカレー」

 LOHACOが扱うレトルトカレーの中で、最も売れていたのは、他社のバターチキンカレーだった。この商品をベンチマークのターゲットに設定し、LOHACOでバターチキンカレーを購入したユーザーが書き込んだレビューをテキストマイニングの手法で分析した。すると「辛味」や「コク」がキーワードであることが分かった。

 市場に出回っているバターチキンカレーを調べると、甘めの味付けが多く、バターのコクとスパイスの辛さを両立した商品がなかった。そこで、新商品のコンセプトを「大人のための辛口バターチキンカレー」と設定し、ユーザーの反応を調査した。

 具体的には LOHACOでレトルトカレーを購入した2800人を対象にウェブアンケートを実施。商品コンセプトを提示して印象を聞くと、「魅力を感じる」「やや魅力を感じる」と回答した割合が、80%を超えた。さらに試作品を用意し、日ごろからレトルトカレーを食べている60人を対象に試食会を実施した。そこでも「おいしかった」という感想の数が、ターゲットの商品を上回った。

 「ビッグデータから潜在ニーズを分析し、商品コンセプトを立案できる他、LOHACOユーザーのフィードバックを改良に生かせる」と同社BtoCカンパニーライフクリエイション本部フード/リカー事業部フード/リカー、立花智子氏はラボのメリットを説明する。

 こうした検証を積み重ねた商品に、LOHACOユーザーは敏感に反応した。発売後1カ月間の購入者のうち、ハウス食品のレトルトカレーを新規に購入した割合が57%を占めた。新規客を開拓するという当初の目的を達成できたわけだ。

 このレトルトカレーは一例にすぎない。多くの企業と、このようなビッグデータを活用したヒット商品開発の実例を積み重ね、そこで得た知見をラボを通して共有してきた。こうした活動を繰り返し、会員企業と共存共栄の関係を構築したことが、LOHACOの急成長を可能にしている。

アスクルBtoCカンパニーライフクリエイション本部フード/リカー事業部フード/リカー 立花智子氏
アスクルBtoCカンパニーライフクリエイション本部フード/リカー事業部フード/リカー 立花智子氏