マーケティングの重要なパートを担いながら、普段は注目されることもなく、黒子に徹し続ける広報。その仕事の裏側について現役広報パーソンが赤裸々につづります。第1回は今や情報は一瞬で世界を駆け巡るという話。日本だけでなくグローバル視点で考えれば、広報の仕事もより面白くなってきます。

 皆さんこんにちは。パソコンメーカーのレノボと日本電気の合弁会社、NECパーソナルコンピュータで広報を担当している鈴木正義です。私は前職のアップルを含め、かれこれパソコンや携帯電話の広報を15年以上やってきました。その他、マーケティングや営業も経験したなかで、広報って「こういうところが辛いよねー」「こういうときは困ってませんかー」というような、現役広報ならではのホンネをここで披露します。他社の広報担当者、マーケティングや商品企画の方々、できれば経営幹部の皆さんにも、広報活動や情報発信のヒントになるような話を紹介できればと思っています。

「日本のすし店が3億円もするマグロを買ったんだって?」※写真はイメージ(写真/MikeDotta / Shutterstock.com)
「日本のすし店が3億円もするマグロを買ったんだって?」※写真はイメージ(写真/MikeDotta / Shutterstock.com)

記者を引き付ける「インパクト」とは?

 さて、その記念すべき第1回は「とてつもない広報」といきなりの大上段です。

 2019年1月、会社の出張で米国に行ったときのことです、タクシーに乗ると運転手さんからこんなことを聞かれました。

 「ユーは日本人か。なんだかニュースで聞いたけど、日本のすし店が3億円もするツナ(マグロ)を買ったんだって?」

 これは東京中央卸売市場(豊洲市場)の名物となっている本マグロの初競りで、すしチェーン店「すしざんまい」を運営する喜代村(東京・中央)が、高額でマグロを競り落とした件です。日本でも大きな話題になりましたが、実はこのニュース、海外のメディアでも相当大きく取り上げられたようです。喜代村の木村清社長はご存じか分かりませんが、「あのツナを3億円で買ったすし屋」という点で、海外でもとてつもなく強い印象を一瞬で与えたのです。

 こうした「ちょっと耳を疑うようなニュース」は、千里を駆けるとでもいいましょうか、SNSの発達した現代では簡単に海を越え、世界の隅々にまで影響力を及ぼすことができます。もしかすると、自分の発信したニュースが世界で話題になるかもしれない――広報担当としてはなんとも面白い時代になったと思います。

 SNSについては、記事が「どう読まれたか」を知るツールとして広報担当にも欠かせないものになっています。こちらの狙い通りの見出しがドーンと出て、SNSでブワーっと拡散したときこそ、広報担当がスカッとする瞬間です。まるで貯金通帳を眺めるように、SNSを数分ごとにチェックしてニヤニヤしてしまいます。

 しかし、一方でネガティブなニュースが出たときはスマートフォンのSNSアプリを開いた瞬間、胃の辺りがズーンと重くなって頭から血の気がサーっと引いていきます。

 さて、すしざんまいのケースのような“とてつもない話題”は、なかなか作ろうと思って簡単に作れるものではありません。現実に目を向けると、プレスリリースを書いている段階から、これはかなり微妙な発表だなという案件も少なからずあります。そういった広報ネタに、いかにインパクトを与えるかが腕の見せどころといいますか悩みどころになるわけです。なかなか「とてつもない広報」への道は険しいのです。

 では「インパクトって何?」ということになりますが、間違えてはいけないのは、オーバーな表現で世紀の大発表のようなリリースを書くことではありません。毎日山のようなリリースに目を通している記者は、一瞬でニュースの事実関係を精査するので、メッキ加工を施しただけの発表はすぐに看破されてしまいます。なぜそうだと言えるのかというと、私自身も何回もそうやって撃沈されてきたからです。