中国の家電・住設事業の売上高を3年で1.5倍にし、1兆円の大台に乗せる──。景気減速という逆風の中、パナソニックは2019年3月、野心的な目標をあえて掲げた。パナソニックの強気の根拠となっている、中国市場でのここ4年間の取り組みと、これからの方向性を、2回にわたって解説する。

中国・上海で開催されたアジア最大規模の家電博「AWE 2019」に出展したパナソニックのブース
中国・上海で開催されたアジア最大規模の家電博「AWE 2019」に出展したパナソニックのブース

 「パナソニックは2018年4月に発足する社内カンパニー『中国・北東アジア社』が担う中国での家電・住設事業の売上高を、3年後の21年までに、現在の約400億元(約6680億円)から約600億元(約1兆20億円)まで引き上げる」

 4月1日付けで、パナソニックの家電事業全体を率いるアプライアンス社社長の立場から、中国・北東アジア社社長に転じたパナソニック代表取締役専務執行役員の本間哲朗氏は、高らかにこう宣言した(宣言当時は代表権なし)。3月14~17日に中国・上海で開催されたアジア最大規模の家電博「AWE 2019(APPLIANCE & ELECTRONICS WORLD EXPO=中国家電及消費電子博覧会)」の前日に開催した同社の発表会でのことである。

 中国では18年から目に見えて景気が減速し始め、同年の家電・住設市場の規模は金額ベースで前年を下回る。家電メーカーや住設機器メーカーにとって環境は決して良くない。直近では、習近平政権が、「一定金額以上の家電製品を購入した消費者に、定められた金額の補助金を出す」という政策を年明けに発表したものの、3月半ばの段階で実行されているのは数多の省・市の中で北京市だけ。その他の地域では補助金目当ての消費者の買い控えが起きており、逆に家電の売り上げは低迷している状況だ。

パナソニックの発表会でV字回復の経緯を解説するパナソニックAPチャイナ総経理の呉亮氏
パナソニックの発表会でV字回復の経緯を解説するパナソニックAPチャイナ総経理の呉亮氏

 それでもパナソニックが強気で成長を志向していられるのは、12年のテレビ事業撤退以来低迷していた中国の家電事業を、15年以来の取り組みでV字回復で成長させてきたという実績があるから。加えて、パナソニックでは初めてとなる、地域を包括する社内カンパニーの発足により、これまで以上に中国の市場の動きに即応できる体制を整えたからだ。

中国人がトップの現地の家電統括会社が司令塔として機能

 まず、パナソニックがこれまでどんな取り組みをしてきたかを振り返ろう。

 15年4月、それまで家電製品ごとにバラバラに存在していた現地法人の多くを束ね、中国における家電事業をつかさどる機能を持つ会社「パナソニックチャイナ アプライアンス中国」(アプライアンス社中国)を発足させた。次いで17年4月には、中国人の呉亮氏をトップに据えて、家電事業を統括する文字通りの新会社「パナソニックAPチャイナ」を立ち上げた。

 これにより、商品ごとの開発・製造・販売の各部門の連係が強化され、開発から販売まで一貫した視点で考えられた商品や施策、複数の商品に横串を通した施策など、これまで難航しがちだった企画が日の目を見るようになった。

 目に見えて変わった点の1つは、新商品の投入時期だ。日本ではボーナスや年末商戦を見込み、家電の新商品の発売時期は6月と11月に集中しがち。しかし中国では、旧正月前後の1~3月に商戦と新商品の発売が集中する。従来は日本のやり方を中国でも踏襲していたため、肝心の商戦時期に新商品がなく、中国の地場メーカーの後じんを拝していた。そこで新会社が商品ごとに各部門間を調整し、17年から1~3月に多くの新商品を投入できるようにしたのだ。

 商品を売り込む想定ターゲット層をパナソニックとして絞り込んだことも、大きな変化である。低価格の商品を作って幅広いユーザー層を狙っても、地場のメーカーにコスト競争力で劣る。そこで、「新貴層」と呼ばれる、20代から30代後半で世帯年収35万元(約584万円)以上の共働き夫婦をコアターゲットに設定した。次いで同世代の、世帯年収21万元(約350万円)程度の共働き夫婦まで想定ターゲット層を広げて、商品の多くをこうしたプレミアムクラスのユーザーに展開すると決めた。

 そうして、商品開発からデザイン、マーケティングまでを、現地事情に通じた中国人トップがスピード感を持って意思決定する体制を整え、ターゲットのニーズに最適化した製品を、ここ数年発売してきた。