ファッションキュレーターとしてデザイナーと産地の工場との協業を支援する糸編の宮浦晋哉代表。そのノウハウを仕組み化したのが「産地の学校」だ。日本の繊維産業の技術を生かした、高くても売れるものづくりとは?

「ユーザーのニーズをつかみ、日本にしかできないものを作れば、価格が高くても売れる」と語る宮浦氏(写真/名児耶 洋)
「ユーザーのニーズをつかみ、日本にしかできないものを作れば、価格が高くても売れる」と語る宮浦氏(写真/名児耶 洋)
宮浦晋哉(みやうら・しんや)氏
ファッションキュレーター
糸編 代表取締役
1987年生まれ。2012年、日本のものづくりの発展と創出を目指すキュレーション事業「Secori Gallery」創業。13年にセコリ荘開店。16年に名古屋芸術大学特別客員教授就任、「NUA textile lab」発足。17年にSecori Galleryを株式会社糸編に改組

ファッションキュレーターとはどんな仕事なのでしょうか。

宮浦氏 2012年から繊維産地を巡り、年間200社以上の工場を訪れて、良い素材をデザイナーに紹介したり、自分がいいと思うものを自分の媒体で発信したりしています。近年、産地ブームで産地の工場と一緒にものづくりをするデザイナーは増えているのですが、全員が素材や技術に詳しいわけではない。そこで僕が産地の工場を紹介し、さらに「翻訳係」のような立ち位置で「デザイナーのイメージを工場側が理解できるように伝えていく」といった仕事もしています。年間、約100ブランドに対応していて、その中には海外のコレクションに参加しているデザイナーもいます。

 僕がデザイナーにマンツーマンで伝えていることを仕組み化したのが、17年5月に立ち上げた「産地の学校」です。繊維企業との付き合い方やテキスタイルの基礎知識などを学べて、さらに上級コースも用意しました。デザイナーだけでなく、大手アパレルメーカーの社員や百貨店のバイヤーなども受講しています。また、旭化成と共同で、再生セルロース繊維・キュプラのブランド「ベンベルグ」について学ぶコースも18年10月に始まりました。およそ半年間でカリキュラムは全6回。最後に新商品の企画や加工法、ビジネスのアイデアなどを受講生がプレゼンする機会もあります。

産地の学校・東京校の受講生が、東京・八王子にある文化学園の文化ファッションテキスタイル研究所で講義を受けている模様。織機の実物を見ながら仕組みや違いを学んだり、世界でも珍しい糸をつなぐことができる機械「アレンジワインダー」を見学したりした。講義を行っているのは、文化ファッションテキスタイル研究所の宮本英治所長
産地の学校・東京校の受講生が、東京・八王子にある文化学園の文化ファッションテキスタイル研究所で講義を受けている模様。織機の実物を見ながら仕組みや違いを学んだり、世界でも珍しい糸をつなぐことができる機械「アレンジワインダー」を見学したりした。講義を行っているのは、文化ファッションテキスタイル研究所の宮本英治所長

繊維産業の技術とデザインを掛け合わせることで、今までにない新しい素材が生まれる可能性があることは理解できます。ただ、良いものを作ったからといって、必ずしも売れると限らない。売れるためには何が必要なのでしょうか。

当然のことですが、マーケットのトレンドとユーザーのニーズをリサーチすることは必須です。成功しているファクトリーブランドは、ファクトリー独自の技術的なスペックが高く、なおかつマーケットのトレンドやデザイン、ユーザーの金銭感覚もつかんでいます。山形の老舗ニットメーカー米富繊維のファクトリーブランド「COOHEM(コーヘン)」は、その一つ。オリジナル商品が全国のセレクトショップなどで販売され、とても人気があります。また、仲介業者を通さず、SNSで情報発信をしてエンドユーザーに直接販売する「foufou(フーフー)」は、DtoC(Direct to Consumer)ブランドとして注目を集めています。