ユーザーと対話するシステム「チャットボット」が、ビジネスの世界でも注目が高まっている。その背景にあるのがAI(人工知能)の進歩。紋切り型の味気ない対話ではなく、あたかも人と話しているかのごとく応答できるレベルに近づいている。優れたAIを比較的安価に利用できるようになったため、能力の高いチャットボットの開発コストも抑制できるようになった。

 今後、マーケティング・ツールとしての利用も有望だ。近い将来、例えばチャットボットが相手の出身地に合わせた方言で話すといったことも可能になる。そうなれば、警戒心を解いた相手との会話の中から、サービスに有益な周辺情報の収集も期待できる。

 ブームとなっているチャットボットの現状や未来像について、東京工業大学科学技術創成研究院未来産業技術研究所教授の奥村学氏がやさしく解説する。

AIの進歩で幅広い分野での導入が期待されるチャットボット(写真:vectorpocket / PIXTA)
INDEX
  • チャットボットとは何か
  • 種類・仕組み
  • メリットとデメリット
  • 歴史と導入事例
  • ブームの背景
  • チャットボットの未来像
  • 導入費用について
  • 解説・監修

チャットボットとは何か

 「チャットボット」とはテキストや音声を通して人と話ができるシステムあるいはツール。「対話(chat)」と「ロボット(bot)」を組み合わせた造語。

 対話に必要な知識を集めたデータベースを準備すれば、24時間365日、音声やチャットの自動応答によって「問い合わせ」や「注文」などの作業を代行できる。企業にとっては既存のFAQとは異なり、ユーザーの曖昧な言い回しからでも、自社の製品やサービスに関して応答できる。

 AIの進歩により、以前に比べて実用性の高いレベルで話せるまでに進化したなどの理由から、マーケティング・ツールとしての認知度や重要度が高まり、チャットボットを研究・開発する企業、導入する企業が急増している。

チャットボットの種類・仕組み

 チャットボットは、ユーザーから求められる対話の内容によって、2つのタイプに分かれる。

● 対話タイプ(1):タスク指向型(質問応答型)
 ユーザーが何か目的を持ってシステム側に質問すると答える。電話で航空券を予約するなど、特定のタスクの達成を目的とするタイプ。IBMの「IBM Watson」などがこれに相当する。

● 対話タイプ(2):非タスク指向型(雑談型)
 特定の目的を持たないユーザーの問いかけにも答える。好きな食べ物や趣味の話など、雑談的な対話を続けるタイプ。マイクロソフトの「女子高生AI りんな」などがこれに相当する。

 さらにチャットボットは、システムの作り方(仕組み)によっても2つのタイプに分かれる。

● システムタイプ(1):ルール・パターン型
 想定される質疑応答をあらかじめプログラムして、ルール(パターン)に従って対応することで、ユーザーとの対話が成り立っているように見せるタイプ。FAQ対応など、顧客からの問い合わせや注文の対応に適している。

● システムタイプ(2):機械学習型
 膨大なデータを繰り返し学習することで、ユーザーからの質問内容に対して、統計的に正解の確率が高い回答を導き出すタイプ。雑談などルール(パターン)が限定されていない対話に適している。