東日本旅客鉄道(JR東日本)が省人型「キオスク」の普及に本腰を入れる。2年にわたる「Amazon Go」型店舗の実証実験の結果を受け、システムの実用フェーズに入った。子会社のJR東日本スタートアップ(東京・新宿)を通じ、省人型店舗の専門会社設立の検討を開始。将来的にはシステムの外販も視野に入れる。

JR東日本スタートアップが2018年10月17日~同12月14日にかけて、東京・赤羽駅の5、6番線ホーム上で無人決済店舗の実証実験を実施した

 設立に向けて2019年2月21日に基本合意書を締結した新会社は、AI(人工知能)を活用した無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を開発するサインポストとの共同出資会社となる。JR東日本スタートアップは、ベンチャー企業と共同でJR東日本の持つ資産と新技術を組み合わせた新事業を創出する役割を担う。

 JR東日本にとって、「省人化」は大きなテーマの1つ。企業と利用者に提供する価値が明確なため、積極的に取り組んでいるという。特に課題なのが地方だ。人手不足による人件費の高騰で、地方店舗の採算が合わなくなっている。「売店は駅や地域にとって必要な機能」(JR東日本スタートアップの阿久津智紀マネージャー)だが、赤字を垂れ流すわけにもいかない。省人型店舗の実用化は、JR東日本が地方店舗を維持するうえで必達の目標と言える。

 そこで実用化を目指し、JR東日本スタートアップはこれまで2回、サインポストと共同で「Amazon Go」型の無人決済店舗の実証実験に取り組んできた。Amazon Go型店舗とは、店内に設置したカメラ映像などをAIが解析して、来店者が手に取った商品を認識。退店時に自動的に決済される仕組み。

 最初の実験は、17年11月に埼玉・大宮駅で実施。駅構内のイベントスペースにテスト的に店舗を設置した。18年10月17日~同12月14日には実用化に向けて、本格的な実証実験を行った。舞台となったのは東京・赤羽駅だ。5、6番線ホーム上に小型の無人決済店舗を開設して、実際に消費者が体験できる場を設けた。

 JR東日本スタートアップの店舗と、Amazon Goの最大の違いは店のサイズだ。駅構内やホームに設置することが多いため、小型にならざるを得ない。ところが「小型店舗の方が(Amazon Go型を)実現するのは圧倒的に難しい」と阿久津氏は言う。赤羽店を解剖することで、実現する苦労や工夫点、そして今後の課題が浮かび上がる。これらのポイントは、同社に限らず小規模店舗の省人化を目指す企業であれば、避けては通れない道だ。

省人店のシステムは実用フェーズに

 赤羽の店舗は、駅構内にある小型の売店、いわゆる「キオスク」を無人決済店舗化したもの。入り口のカードリーダーに「Suica」などの交通系電子マネーのカードをかざすと自動ドアが開く。店内では、天井や商品棚などに取り付けられた100台を超えるカメラの映像を、AIが自動解析して、来店者と手に取った商品をひも付ける。商品写真などは事前にAIに学習させておく。

 入り口近くにある決済エリアに入ると、手に取った商品の合計金額が自動的に計算されてディスプレーに表示される。確認後に入店時にかざしたカードから自動的に引き落とされて、決済が完了する。再度カードをかざすと、出口の自動扉が開き退店できる。

決済エリアで決済後に、入場にかざした交通系電子マネーのカードをかざすと退店できる

 この入店から退店までの導線設計は苦労した点の1つ。「入店と退店を、システムが正しく把握できるようにしなければならない」(阿久津氏)からだ。赤羽店は導線が「コの字形」になっている。入店して、一直線に出口に向かえた方が利用者にとっては楽だが、出口付近に設ける決済エリアと販売エリアを行き来できる店舗設計になってしまい、システムが正常に機能しない恐れがあった。コの字形の店舗内導線は、商品販売エリアと決済エリアをシステムが判別しやすくし、現状の技術でAmazon Go型の小規模店舗を実現するための工夫なのだ。

販売エリアと決済エリアを区分けするために、店内はコの字形の導線設計となっている

 「人の重なり」も小型店舗ならではのハードルの1つ。複数の入店者がいる場合、通路が狭いためカメラの映像に人が重なって映りやすい。サインポストとの共同開発店舗は、カメラの映像を解析して、入店者と手に取った商品をひも付けるシステム。人の重なりによって映像に死角ができてしまうと、手に取った商品を正しく判別できなくなる恐れがある。そのため、赤羽店では入店者数に制限を設けていたが、結果、店の外には入店待ちの列ができていた。これではレジ待ちをしているのとさほど変わらない。

 同様の理由で棚に置ける商品数にも限りがある。一般的なコンビニの多くは、隙間を設けることなく、商品がぎっちり棚に陳列されている。一方、赤羽店は仕切り板で商品間隔を開けて商品を陳列していた。これも、来店者が商品を取ったり戻したりした情報を、きちんとカメラを通じた映像で把握するためだ。裏を返せば、通常のコンビニよりは商品数が少ない。全部で約140商品を販売した。

第6回
僅か100万円で開発した「Amazon Go」型店舗 その意外な仕組み
第8回
中国の省人型コンビニに新潮流 Amazon Go型へと舵を切る