2018年に一気に注目度が高まった「VTuber/バーチャルYouTuber」。その発信源の1つになったのがgumiグループだ。今年は、VTuber、VR、ブロックチェーンといった新しい分野や技術に積極投資していくという。gumiの創業者で、グループをけん引する國光宏尚会長に戦略を聞いた。

 2018年にVTuberが注目されたきっかけは、「キズナアイ」が海外に続いて国内でも大ブレイクしたこと。キズナアイのYouTubeチャンネル「A.I.Channel」は登録者数が240万人を超えるなど、VTuberの象徴的な存在になった。現在は、大手ゲーム会社を含め、VTuberの育成に参入する企業が相次ぎ、新たなエンターテインメントビジネスの鉱脈として期待が高まっている。

 このキズナアイは、gumiグループによるVR分野のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups(現Tokyo XR Startups)」が、17年に参加企業として採択したActiv8(アクティベート)が支援していたVTuberだ。

 gumiグループはTokyo VR Startupsを15年に設立。自らVRマーケット創出のために投資してきた。新技術に貪欲に取り組む背景には、gumiがネット企業からゲームビジネスに参入したという出自によるところが大きい。5年目を迎えた今年も、投資分野は「VTuber」「VR」「ブロックチェーン」といった新しい分野や技術だと、國光会長は語る。

VTuberの登場で人気IPの作り方が変わる

18年は、gumiグループとして投資していたActiv8が支援するVTuber「キズナアイ」が大ブレイク。大きなムーブメントになりました。

キズナアイのYouTube上のファン数は240万人を超えて、世界でもトップクラスのところに来ています。それ以外にも今、VTuber関連の投資先が合わせて11社ぐらいあります。キズナアイのようなIP(キャラクターなどの知的財産)を育てる会社が8社、VTuberのVRライブ配信などのプラットフォームを作るところが3社と、幅広くやっていっています。

VTuberとしてトップクラスの人気を持つキズナアイ。YouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数は240万人を超える
VTuberとしてトップクラスの人気を持つキズナアイ。YouTubeチャンネル「A.I.Channel」の登録者数は240万人を超える

キズナアイのようなIPを育てる会社というのは、キャラクターを作る、いわゆる新しいタレントを作る企業と捉えて良いですか?

そうですね。VTuberには大きく2つの価値があると思っています。1つは、VR時代のキラーコンテンツとして。19年5月ごろに、スタンドアローン型VRヘッドセット「Oculus Quest」が発売される予定で、価格も399ドルまで下がってきました。ハードはいよいよ環境が整ってきたので、あとはコンテンツが勝負どころになるだろうと。そのキラーコンテンツの1つはゲーム、もう1つがVTuberだと考えています。

 もう1つは、新しいIPの作り方としての価値です。エンターテインメントビジネスはIPビジネス。IPビジネスは、要するにキャラクタービジネスです。最終的にどれだけの数の人気キャラクターを持っているかでエンターテインメント企業の強さが変わってきます。

 例えば任天堂が強い理由は、マリオがいて、ポケモンがいて、ゼルダがいるということ。これはディズニーも一緒で、やっぱりミッキーマウスなどがいることが大きい。

 今までの人気IP、人気キャラクターの作り方は、多大なお金と時間をかけてゲームや映画、アニメといった作品を作り、戦略的に認知度を高めつつ、それでも最後は神頼みの要素がありました。作品が大ヒットして、人気IPとして育てば会社は安泰。これがエンターテインメントビジネスの基本だったと思うんです。

 VTuberは最初にキャラを作る。その中から人気キャラが生まれ、マンガやアニメ、ゲームになる。今までは人気キャラを生み出すために作品を作っていたのが、VTuberの場合はまず人気キャラを作ってから作品づくりをする。VTuberによって、人気IPの作り方の転換が起こるのが面白いと思います。

 それによるメリットが2つあります。1つはリスクが少ないこと。昨今のモバイルゲームの開発は、2年ぐらいの期間を要し、10億円の投資が必要になる。対して、VTuberは数百万円で済む。数百万円の投資で試しながら、人気が出てくれば、次はマンガ化しよう、小説化しよう、ショートアニメ化しようとなり、もっと人気が出てきたら、今度は舞台化しよう、長編アニメを作ろう、いよいよゲームを作ろう、映画を作ろうとなる。イチかバチかじゃなく、ボトムアップできるようになったというのがすごく大きい。

 もう1つは、お客さんとの接触頻度を高められることです。朝のテレビ番組のキャスターじゃないですが、毎日見ていると何か好きになるみたいな。

 今までのエンターテインメントで厳しかったのは、オリジナルで1本当たったとしても、続編を出すまで2年ぐらいかかってしまうことでした。さすがにヒットする前に続編を作り始めるのは無理ですよね。ヒットしてから続編を作ろうとなると、アニメでもゲームでも2年ぐらいかかるんです。この間にお客さんが冷めてしまうリスクが高いので、人気を維持するには相当な努力が必要です。

 VTuberならYouTube上で日々ファンと接点を持ち、ゲームを作るときも「ついに私のゲーム化が決まりました」という感じで、ゲームを制作する過程も配信できます。その間、ファンとの接点が途切れないのが、今までにない新しいところだと感じています。

ライブなどのチケット収入やグッズ展開など周辺ビジネスも広がりそうですね。

VTuberは、既存のYouTuberビジネスとIPビジネスを掛け合わせた展開になると思っています。YouTuberの主な収入は、YouTube上の広告や商品タイアップで、昨今のインフルエンサービジネスにおいても、ヒカキンさんやはじめしゃちょーさん、水溜りボンドさんといったYouTuberの存在はすごく大きくなってきている。例えば、YouTuberのマネジメントを手がけているUUUM(ウーム)は時価総額1000億円ぐらいの規模感があるわけです。

 でも、VTuberとリアルなYouTuberには大きな違いがあります。それは「IPの帰属」です。リアルなYouTuberのIPは本人たちに帰属するので、利益の7~8割を本人に戻し、会社の取り分は2~3割になりますが、VTuberの場合は、IPが会社に帰属するので、取り分が大きくなってくる。アニメ化、ゲーム化などIPの権利ビジネスを考えるとその違いは大きい。