その時々で自分が求めるフィットに変えられる“リアルタイムパーソナライズ”が現実に――。ナイキのスマートシューズ「ナイキ アダプトBB」は自動で個々人に合ったフィットに調整できるだけではなかった。

パワーレース(自動靴ひも調整)機能を搭載し、個々人に合ったフィットに調整できる「ナイキ アダプトBB」(写真提供/ナイキ)

 靴のフィット感を自分好みに調整できる――。ナイキが3月中旬に発売するシューズ「ナイキ アダプトBB」(以下、アダプトBB)の大きな特徴はパワーレース(自動靴ひも調整)機能を搭載し、個々人に合ったフィットに調整できること。つまりフィットのパーソナライズだ。

 特集の第1回で述べたとおり、パワーレース機能を搭載したシューズは、同社が2017年に発売した「ナイキ ハイパーアダプト1.0」もある。しかし、実際に履いてみると、両者の履き心地は全く異なる。ハイパーアダプト1.0が足の甲の部分を中心に締まる従来の靴ひもを締めるのと似た感覚なのに対し、アダプトBBはかかとを中心にがっちり固められるという印象。文字通り、靴と足が一体化する感覚なのだ。実は両者のパワーレース機構は全く違うものだという。

ハイパーアダプト1.0(左)とアダプトBB(右)のシューレース。見た目だけでも全く別物

 スマホとの連携によって使い勝手が向上していることも、ハイパーアダプト1.0との違いだ。米ナイキ デジタルプロダクト担当バイスプレジデントのマイケル・マーティン氏は「シューズとスマホを連携させた理由は、まず第1にアプリがシューズを使いやすくしてくれると考えたから。そのため、スマホのUI(ユーザーインターフェース)はとにかく簡単に使えることを意識した」という。

 その言葉を象徴するように、アプリのUIは非常にシンプルだ。パワーレースの締め具合を調整する画面には「L(左)」「R(右)」の文字が大きく表示されており、LとRそれぞれの文字に触れた状態で上に指を滑らせると締まり、下に滑らせると緩む。LとRがあることからも分かるように、左右それぞれで異なった締め具合にすることも可能。本体のボタンでも締め具合の調整できるが、スマホアプリのほうが微妙な締め具合の調整が簡単にできる。リリースボタンを押せば一気に緩んだ状態になり、脱ぐときなどに便利だ。

スマホ画面に表示されたL(左)R(右)それぞれの文字に触れた状態で上に指を滑らせると締まり、下に滑らせると緩む
足と一体化したフィットを提供するというアイデアを30年前から持っていた米ナイキ クリエイティブ・コンセプト担当バイスプレジデント、ティンカー・ハットフィールド氏による「NIKE MAG」のイラスト。NIKE MAGは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に登場する、足を入れると自動でひもが締まる靴のデザインを具現化したもの。2011年に限定販売され、その利益はパーキンソン病の克服に取り組むマイケル・J・フォックス財団に寄付された

 数あるスポーツの中でも、動きが激しいとされるバスケットボールのシューズにいきなり採用したことにも驚く。

 「バスケットボールは運動量や動きの激しさなどでシューズにすごく負担がかかる競技。そのバスケットボールで高いレベルのフィットが提供できれば、ほかのスポーツにも応用できると考えた。NBA選手などトップアスリートが長時間テストし、そのフィードバックを基に研究所が大学と共同で、レントゲンで選手の足の動きを撮影するなどしながら改良を続けることで、靴の中での足の動きを4割抑えられるようになった。それによってアスリートのスピードを支えられ、コートと足の連動性も高まる」と、米ナイキ イノベーション担当バイスプレジデント兼クリエイティブ・ディレクターのエリック・エイバー氏。

ナイキイノベーション担当バイスプレジデント兼クリエイティブ・ディレクターのエリック・エイバー氏
アダプトBBに開発に当たっては、靴の中の足の動きを研究。動きを4割抑えられるようになったという(写真提供/ナイキ)
第1回
ナイキ「3つのパーソナライズ革命」に身震い
第3回
ナイキ流CRM戦略 買ってから進化し続けるシューズ