マーケターのみならず、あらゆるビジネスパーソンにとってプレゼンテーションのスキルは不可欠。業務の生産性向上が叫ばれる昨今、ゆったりと資料作成に割ける時間は減り続けている。いかに効率的に「刺さる」資料を作るか。プレゼンの書籍を多数執筆してきた戸田覚氏がレクチャーする。

「あなたが言いたいこと」ではなく「相手が聞きたいこと」が何かを考えて内容の構成を考えていくことが良いプレゼンの基本となる (c)Shutterstock
「あなたが言いたいこと」ではなく「相手が聞きたいこと」が何かを考えて内容の構成を考えていくことが良いプレゼンの基本となる (c)Shutterstock

 僕は、20年近く前からプレゼンの本を多数執筆させていただいてきた。本を執筆するうえで心がけてきた最大のポリシーは、その道のプロから“盗み取る”ことだ。成功したプレゼン、ヒットした商品のプレゼンを徹底的に取材して、優れた部分を吸収して読者貴兄にお伝えすることに腐心してきた。

 これまでに見たスライドやプレゼンの数は、数千件に達するだろう。そこでたどり着いたのは、「プレゼンに正解はない」ということだ。業種や職種、伝えたい内容、伝える人、説明時間などで正しいプレゼンのやり方が変わってくる。だから、一概にこれが正解というルールを決めるのは難しい。

 その一方で、これは絶対ダメ――という不正解のポイントは数多くある。よくある間違いは、見た目や細部にこだわるあまり、時間をかけすぎてしまうことだ。素晴らしいデザインのスライドは高く評価されるケースが多い。だが、働き方改革によって時短が叫ばれる中、日々の商談のスライド作りにどれだけ時間をかけられるのだろう。

 平均して日に2件の商談や会議があったとしよう。そのためのスライド作成にそれぞれ3時間かけていたら、それだけで毎日終わってしまう。日々の商談が2時間で、スライド作成が6時間となれば、合計8時間だ。必要以上にクオリティーの高いスライドを作ろうと、延々と残業をするのは、もはや時代に見合っていない。

 まずはスライド作成にかけられる時間を正しく見極めることが大切だ。それが分かれば「デザインにこだわってもいられない」というケースも少なくない。まずは正しく現実を見据えなければならないのだ。だから、本連載では、デザイナーが作ったような素晴らしい見栄えのスライドばかりが正解と言うつもりはない。日々の商談や会議に役立つ、地に足が着いたポイントを少しずつ紹介していけたら幸いだ。

第一歩は自分の強みを見極める

 自分の強みを知ることも大切だ。次のチェック項目の中から、自分の強みがどれかを確認してみてほしい。どれも「ちょっと得意」程度でかまわない。「うまいとは思えないけど好きだ」でもOK。要するに、自分が得意とする傾向を再認識してみてほしい。これが、短い時間で少しでも良いスライドを作るために、とても重要な要素となるのだ。

まずはチェックシートで自分の強みを把握する。自分の特性を生かしたスライドを作ることが成果につながる近道となる
まずはチェックシートで自分の強みを把握する。自分の特性を生かしたスライドを作ることが成果につながる近道となる

 例えば、展示会などイベントの講演でプレゼンを見て、「分かりやすい!」と感心し、それを参考に次のスライドを作るとしよう。そのスライドにイラストがたくさん入っていたなら、同じことをしたくなる。ところが、自分は全く絵心がなく、苦手だったとなれば、ひたすらウェブを検索してイラストを探して、流用し始める。

 これがダメプレゼンの典型例だ。長い時間をかけたのに各ページにイメージがバラバラなイラストが入り、統一感のないひどいスライドが出来上がる。プロのイラストレーターに外注したスライドは素晴らしいが、そんな予算をかけられるケースは、まれなのだ。

 自分の強みが写真撮影なら、普段からスライドに使えそうな写真を撮りためておくことで、いざというときに素材が一気にそろう。話すのが好きなら、スライドの要素を徹底的に省略して、話術で勝負する――このように、あなたの特性を生かしたプレゼンをするのが、実は最も近道で、成果につながりやすいのだ。

 上のチェック項目にないものでもかまわない。「自社製品に精通している」「トレンドを追いかけている」「技術に詳しい」など、自分の強みをまず把握して、それを軸にスライドを作ることを心がけていこう。

第2回
プレゼンの勝率を高める第一歩 人の心に刺さるのは25文字まで