ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は、スーツのように見える作業着で注目されるオアシスライフスタイルグループ(東京・港)の後編。

「スーツ農家」として知られていた山形県の若手農家、齋藤聖人氏とコラボレーションすることで「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」を全国にアピールできた
「スーツ農家」として知られていた山形県の若手農家、齋藤聖人氏とコラボレーションすることで「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」を全国にアピールできた

 スーツのように見える作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」を事業化するきっかけは、意外なところにあった。オアシスライフスタイルグループの水道工事会社であるオアシスソリューションが普段、取引している三菱地所コミュニティから「ワークウェアスーツを高級マンションの管理人の制服に採用したい」という注文がきたのである。

 三菱地所コミュニティには以前から、「高級マンションのエントランスに作業着の人がいるのはどうなのか」という意見があった。だが、ワークウェアスーツなら高級マンションでも違和感がないと判断したという。自社の作業着として開発したワークウェアスーツが外部に売れるとは思ってもみなかったが、この注文で自信を深め、外販を行う「オアシススタイルウェア」を2017年12月に設立。18年3月から本格的にアパレル事業に乗り出した。

ワークウェアスーツを着た三菱地所コミュニティの管理人の例。以前の姿より高級感がある
ワークウェアスーツを着た三菱地所コミュニティの管理人の例。以前の姿より高級感がある
水道工事の作業着として採用した生地を使っているため、管理人のさまざまな業務にも適している
水道工事の作業着として採用した生地を使っているため、管理人のさまざまな業務にも適している

「スーツ農家」とのコラボでメディアが注目

 ワークウェアスーツがメディアに大きく取り上げられたのは18年春。山形県の若手農家、齋藤聖人氏との出会いがあったからだ。オアシスライフスタイルグループの事業の1つである水道工事の業界と斎藤氏の従事する農業は共通の悩みを抱えている。「キツイ」「汚い」「もうからない」「地味」などのマイナスイメージが先行して、若い人材が集まらないことだ。齋藤氏は、そうしたイメージを変えるため以前から「スーツ姿で農業をする」という活動を行っていた。

 「斎藤氏の『業界のイメージを変え、若い人たちを取り込みたい』という気持ちに共感した。こちらから連絡したところ意気投合し、山形県でワークウェアスーツの贈呈式を行うことになった」(オアシススタイルウェアの中村有沙社長)。

 贈呈式には山形県の地元メディアが集まり、県内で大きな話題となった。その様子が全国にも報道され、さらに広がったという。その後はメディアなどで「作業着×スーツ」として取り上げられ、認知度を上げた。売り込みの営業などはせず、現在もネットを中心に法人や個人に販売している。

スーツ姿で作業する齋藤氏は、農業のイメージを変えることで若い人たちを取り込もうとしている
スーツ姿で作業する齋藤氏は、農業のイメージを変えることで若い人たちを取り込もうとしている
ワークウェアスーツの贈呈式には地元メディアが集まり話題となった。その様子が全国にも報道されたことで、ワークウェアスーツの認知度が高まった
ワークウェアスーツの贈呈式には地元メディアが集まり話題となった。その様子が全国にも報道されたことで、ワークウェアスーツの認知度が高まった

素人だったからこそ、アパレル業界にも飛び込めた

 自社のユニホームを変更しようと決めた際、オアシスライフスタイルグループはアパレル事業に関しては素人だった。デザインやファッションに造詣の深い社員はいても、プロとしての経験があったわけではなかった。中村氏も、「自分たちでも『よく最後までやり通せた』と感じている」と話す。

 「アパレル業界はジャンルごとの線引きがハッキリしていて、作業着メーカーは作業着、スーツメーカーはスーツだけを作るのが一般的。そのため、作業着とスーツの中間のような衣服はなかった。素人だったからこそ、物怖じせずにその線引きを飛び越えていけた」(中村氏)。水道工事の作業員にも実際に意見を聞き、細かい部分にこだわりながら、ユーザー目線のものづくりができたことも良かったという。

 オアシススタイルウェアは、ワークウェアスーツの新たなモデルも展開。18年11月にスーツと私服の中間のような「YZO(ワイゾー)」というブランドを立ち上げた。オアシスライフスタイルグループの関谷有三社長の「フォーマルな会合や、打ち合わせなどでも着られる、私服のようなスーツが欲しい」という一声から生まれた。19年3月にはストリートモデルとした新ブランド「MNT(エム・エヌ・ティ)」も発表。商品展開を進めている。オアシススタイルウェアの売上高(18年3月~2月末)は1億円。来期は3億円を目指す方針だ。

「アパレル業界には全くの素人。だからこそ、思い切ってやれた」(オアシススタイルウェアの中村有沙社長)
「アパレル業界には全くの素人。だからこそ、思い切ってやれた」(オアシススタイルウェアの中村有沙社長)
18年11月に立ち上げた、スーツと私服の中間のようなデザイナーズモデル「YZO(ワイゾー)」。俳優兼モデルの平山浩行氏とコラボレーションし、スーツのカジュアルな着こなしを提案
18年11月に立ち上げた、スーツと私服の中間のようなデザイナーズモデル「YZO(ワイゾー)」。俳優兼モデルの平山浩行氏とコラボレーションし、スーツのカジュアルな着こなしを提案
19年3月に発表した新ブランドの「MNT(エム・エヌ・ティ)」は男女の区別をなくすなど、新しい事業展開を狙った(写真の左2人が着用)
19年3月に発表した新ブランドの「MNT(エム・エヌ・ティ)」は男女の区別をなくすなど、新しい事業展開を狙った(写真の左2人が着用)

(写真提供/オアシススタイルウェア)

第7回
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