ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は産業機器向け電源メーカー、ベルニクス(さいたま市)の後編。

ベルニクスのレンタル事業向け電動アシスト自転車と給電ステーション。このときの給電方式はワイヤレスだけでなく有線方式も用意し、事業者が選べるようにした
ベルニクスのレンタル事業向け電動アシスト自転車と給電ステーション。このときの給電方式はワイヤレスだけでなく有線方式も用意し、事業者が選べるようにした

 ワイヤレス給電で保温・加熱できる家庭用のマグカップや卓上照明といった「POWER SPOT」(パワースポット)を開発し、2019年4月からBtoC分野に進出するベルニクス。好みの温度で飲み物を保温できるマグカップや、ぬるかんから熱かんまで設定できる日本酒向けの器などを販売する。産業機器向けのBtoB市場が中心だった企業が、方向転換しようとしている。

 BtoC市場への参入について、ベルニクスには1つの経験があった。それが、さいたま市や埼玉大学との産官学による電動アシスト自転車研究プロジェクトだった。このときもワイヤレス給電の技術を活用して15年にプロジェクトを開始。17年には専門の子会社「ベルシェアリング」を設立し、電動アシスト自転車と給電ステーションを一体で提供する事業をスタートした。

 産業機器向け事業を手掛けてきたベルニクスにとって、一般のユーザーが乗る電動アシスト自転車の開発は畑違いの分野。だが産官学共同プロジェクトであるため埼玉大学からアドバイスや協力を得られたことや、たまたまデザインを学んだ学生をベルニクスの社員として採用していたこともあって、試行錯誤を続けながら事業化にこぎつけることができた。BtoCといっても、マグカップなどと電動アシスト自転車は異なる分野。だが、たとえ電動アシスト自転車でも、ベルニクスにとって最初の一歩を踏み出せたことが重要だったという。

 「ベルニクスはこれまで産業機器向けの電源一筋に技術を培ってきた。その技術力には自信がある」と鈴木健一郎社長は言う。「我々のように高い技術が詰まっている中小企業は日本にはたくさんある。そうした企業が技術を応用しスタートアップ的なチャレンジをすれば、新しい市場を作り出せるはず。しかし、なかなか最初の一歩を踏み出せないのもまた中小企業だ。我々は電動アシスト自転車の開発で最初の一歩を踏み出すことができた。続くパワースポットを自社ブランド商品として成功させることで、他の中小企業にもチャレンジする勇気を出してもらえるような存在になりたい」(鈴木社長)。

ベルニクスの鈴木健一郎社長
ベルニクスの鈴木健一郎社長
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