アシックスが米ボストンの拠点を中核に、世界でデジタル戦略を加速している。2016年に買収したランニングアプリの事業は3年間でユーザー数が1000万人以上増え、4500万人に達した。ランニングアプリとECのIDを統合し、ナイキ対抗に向けて成長戦略を実行し始めている。

アシックスの川上和也デジタル推進部長(米ボストンのアシックスデジタル本社)
アシックスの川上和也デジタル推進部長(米ボストンのアシックスデジタル本社)

 買収した米フィットネスキーパーは2018年1月にアシックスデジタルに社名変更し、ランニングアプリ「Runkeeper」の開発に加えて、全世界のECやデジタルマーケティングに取り組んでいる。同年10月にはボストン駐在の川上和也ゼネラルマネージャーが、本社社長直轄のデジタル推進部長に就任した。「次のフェーズとして、日本からボストンやワールドワイドとの連携を強めていく。日本は新規のものに取り組んでいきたい」(川上部長)。

ランニングビッグデータを商品開発に

ランニングアプリ「Runkeeper」の画面。買収後3年でユーザー数が1000万以上増えた
ランニングアプリ「Runkeeper」の画面。買収後3年でユーザー数が1000万以上増えた

 「フィットネスキーパーの買収はまさに貴重なデータを得るためだった」(川上部長)として、ランニングのビッグデータ活用も進めている。

 データを匿名化して、商品別の利用頻度やランニングの速度などの情報をシューズの開発に生かしている。ユーザーがアプリに登録したシューズのメーカーや型番情報を活用している。国や地域ごとのランニングの傾向も分析している。

 加えて、Runkeeperのユーザーに対して新商品のカラーやデザインについてアンケートしている。アシックス執行役員で、アシックスデジタルの近藤孝明CEO(最高経営責任者)は 「当社のブランドへの関与度の高いユーザーから、競合のユーザーまで幅広いフィードバックを獲得している。ユーザーからは共創に参加したいなどの前向きな意見ももらっている」と言う。近藤CEOは米ボストンに駐在している。

 ランニングの状況を考慮した、Runkeeperの自動レコメンド機能は、ヨーロッパ向けで実装している。目的に合ったランニングのトレーニングや、スタイルにあったシューズやアパレルを提案している。日本を含めた他の地域では、2019年の中ごろから本格的に提供していく。

 一方でRunkeeperのアプリ画面に広告を目立つように出すことは、ユーザビリティーを下げる可能性があり、控えているという。実際、シューズが寿命の走行距離に近づいたら、アシックスのECに誘導する施策を試したが、販売効果はあまりなかった。直接的な購買への誘導が敬遠されたもようだ。