CES 2019×モビリティ「3つの要点」

 ここで今回のCES 2019を視察して、モビリティ分野で見られた特徴的なキーワードとして下記の3つを挙げておきたい。


  1. モビリティのパーソナライズ化
  2. 社会実装フェーズに入った自動運転(特集第2回、1月22日公開予定)
  3. モビリティ分野のプラットフォーム争奪戦(特集第3回、1月23日公開予定)

 特集第1回の本稿では、「モビリティのパーソナライズ化」について解説する。これは、先述したようにGoogleアシスタントやAmazon Alexaの活用に象徴される動きで、音声UIによって乗車した個人を認識し、その趣味嗜好に合わせた車内サービスを実現するものだ。対象は自動車だけではなく、独ボッシュはバイクにおいても同様の提案をしていた。

 その好例が、“中国版テスラ”とも言われるEVスタートアップ、BYTON(バイトン)だ。新しいEVのコンセプトモデルとして、車内のインパネ部分に左右に広がる49インチの巨大スクリーン、ハンドル中央にもディスプレーを配置した「M-BYTE」を提案していた。

 また、展示ブースではAmazon Alexaと連携してカーナビにログインすると、EVの充電スタンドの選択や、充電中に利用者の好みに合ったレストランなどを米国のグルメサイト「Yelp(イェルプ)」と連携してレコメンドするなどの付加サービスを披露。先行してスマホで培われたパーソナライズ化の機能をモビリティに持ち込み、クルマを使ったUX(ユーザーエクスペリエンス)全体をリデザインしている。

BYTONのコンセプトモデル「M-BYTE」

 また、独アウディは、自動運転時代を想定して「Audi Immersive In-Car Entertainment」と呼ぶ4Dライクな映像視聴環境の車内エンターテインメント提案を行っていた(Immersiveは「没頭できる」の意)。例えば、停車中の車内で映画を見ているとき、映像内の動きに応じてクルマのサスペンションがアメ車のハイドロの如く激しく上下運動するといったアイデアがある。車内空間の共有という点において興味深いデモであり、移動中のエンタメ体験自体がクルマに乗る目的になる可能性を感じた。

 このように、パーソナライズ化で車内の体験が拡張されるだけではなく、移動している時間、EVの充電時間など、これまではムダと思われていた物理的な時間を有効活用する方向で、クルマによる移動体験をアップデートする提案が多くなされていた。

 モビリティのパーソナライズ化が進むことで、ユーザーは自宅でも車内でも一貫した体験を享受できるようになる。特に自動車の移動では、鉄道やバスでの移動よりもプライベートな空間が確保され、よりパーソナルで満足度の高い体験を作りやすい。この点は、今後のMaaS時代の1つの競争のポイントになるだろう。今回の展示により自動車メーカー側の提案は出そろった感もあり、良い意味でのサービス競争がパーソナライズ化という文脈で始まっている。

 以上のように、CES 2019のモビリティ分野のキーワードとして、パーソナライズ化とUX追求の流れを紹介した。MaaSの文脈では、コストや所要時間、速達性の面からマイカーは減少していく予測が多い。しかし今回の展示では、自動車メーカーとしてより効率化を図りながらも、運転自体や移動時間の体験をより向上させてクルマの価値、存在意義を拡張するような姿勢が顕著であり、そこには新しい移動価値の可能性を感じた。

 一般的に移動者は、「早い」「安い」「近い」という要素で移動手段の選択を行う。それに対して、スマホで培われたサービスをモビリティにそっくり落とし込み、パーソナルな体験でユーザーを虜にしていくという自動車メーカー各社の戦略は、移動の効率性が重視され、ともすれば公共交通を主役に引き立ててきたMaaSの勢力図に大きな影響を及ぼしていく。

第2回
MaaS時代 ラストマイルは「アニマル系自動運転」が担う?