平成という時代が幕を閉じる。プロダクト、グラフィック、デジタルなどさまざまな分野のデザイナー10人の目を通し、この30年間をデザインの視点で振り返る特集。最終回はTAKT PROJECT代表の吉泉聡氏。平成は「モノ」の価値が激変した時代であり、今後は「そこでしか生み出せない何か」の価値が高まるという。

(写真/稲垣淳也)
(写真/稲垣淳也)
吉泉 聡(よしいずみ・さとし)氏
TAKT PROJECT代表/Creative Director・Designer
デザインオフィスnendo、ヤマハ株式会社を経て、TAKT PROJECTを設立。デザインを通して「別の可能性を作る」実験的な自主研究プロジェクトを行い、国内外の美術館やデザイン展で発表・招聘展示。その成果をベースにクライアントと多様なプロジェクトを展開している。2018年度グッドデザイン賞審査委員。iF賞、Red Dot賞、German Design賞、グッドデザイン賞、香港M+作品収蔵など。

──平成の30年間における経済、社会の変化について、どうお考えですか?

吉泉 聡氏(以下、吉泉) 平成という時代を語るうえで、インターネットの存在は欠かせません。私は子供の頃は、車や家電、スニーカーなどの「モノ」が好きだったのですが、インターネットが台頭したことで、ある瞬間からモノの意味が激変したと思っています。

 象徴的だったのは、2000年代の初頭に、「Yahoo!BB」が街中でモデムを無料配布していたこと。今にして思えば、「モノではなく、それに付随するサービスで運用していく」というインターネットならではのフリー戦略モデルの走りだったのですが、当時の私には衝撃的でした。ちゃんとした家電が、急に無料で配られているのですから……。

 それまで、私にとってのモノの意味とは「かっこいい」「欲しい」という所有や憧れの対象であったり、「これを使えばこんなことができる」というふうに、フィジカルな価値が強かったと思います。

 現在は、UXデザインなどの考え方も広がり、モノはタッチポイントであるとも考えられるようになりました。モノというよりも、インターネットに接続するための一要素として認識されている。そこはすごい変化だなと。

 タッチポイントなので、フィジカルな価値よりも、そこを通じてどんなサービスやコンテンツを提供できるかが重視される傾向があるのかもしれませんね。一方で、フィジカルな感覚が、豊かな体験を生み出すことも普遍ですから、インターネットでつながるデジタルな体験価値と、フィジカルなモノがもたらす価値、その境界を設けずに、高い次元で融合したいと個人的な課題感としていつも思っています。