平成という時代が幕を閉じる。プロダクト、グラフィック、デジタルなどさまざまな分野のデザイナー10人の目を通し、この30年間をデザインの視点で振り返る特集。第1回はクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏。平成は、デザインが経営戦略の一環となった時代だと振り返る。

「セブン-イレブンが生活インフラとして進化しているように、力のある企業は業態の境界を越えて新サービスを生んでいく」(写真/名児耶洋)
「セブン-イレブンが生活インフラとして進化しているように、力のある企業は業態の境界を越えて新サービスを生んでいく」(写真/名児耶洋)
佐藤可士和(さとう・かしわ)氏
クリエイティブディレクター
慶応義塾大学特別招聘教授
博報堂を経て「SAMURAI」設立。国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロのグローバルブランド戦略やふじようちえん、カップヌードルミュージアムといったトータルプロデュースなどで高い評価を得ている。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリなど受賞多数。著書は『佐藤可士和の超整理術』(日本経済新聞出版社)他

──平成という時代を象徴するデザインやサービスは何だと思いますか?

佐藤可士和氏(以下、佐藤) 3つ考えました。米アップルとセブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)、そしてユニクロです。この3社は、それぞれアプローチの仕方は違いますが、デザインを経営戦略の一つとして活用し、社会で欠かせない存在となり、発展しているという共通点があります。まず、アップルについては僕が語るまでもありませんが、デザインという概念を一般化した企業です。

 プロダクトデザインはもちろん、VI、VX、iTunesやiCloudなど各種サービスからApple Store、広告戦略、プレゼンテーションまで、あらゆるエクスペリエンスを一貫してシンプルでミニマルなデザインで提供し続けています。デザインが装飾的な表現だけでないことや、経営やサービスなどもデザインであることを生活者が知るきっかけになったはずです。平成の30年間でアップルの製品やサービス、ソフトウエアが普及し、デザインという言葉が身近になったことは確かでしょう。

──ユニクロとセブン-イレブンについては、佐藤さんがブランディングを手掛けています。

佐藤 かつて、セブン-イレブンのキャッチフレーズは「開いててよかった」でした。24時間開いていることが「価値」だったコンビニエンスストアの役割は、時代と共に変化し、現在は「近くて便利」というキーワードで展開しています。拠点は増え続け、日本国内では2万店を突破。生活に欠かせないインフラのような存在となり、揺るぎない地位を築いています。特に2007年にプライベートブランド(PB)を立ち上げ、商品を売るだけでなく、メーカーのように独自に商品を開発したことは、社会に大きなインパクトを与えました。

 ただ、そこにはデザインという言語がまだ入っていなかった。僕は10年前からブランディングに携わり、まず、当時1700を超えていたPB商品の体系を1度すべて整理し、セブンプレミアムをはじめ、セブンゴールドやライフスタイルなど、PBのカテゴリーとコンセプトを作成しました。そこから各ロゴやパッケージデザイン、運用のガイドラインまでを決め、リニューアルを進めてきました。

──佐藤さんが手掛けるセブン-イレブンのデザインは、とてもシンプルです。

佐藤 目指しているのは、生活に寄り添うデザインです。存在の主張を消すことを念頭に置いています。お弁当やサラダなどの容器も適宜リニューアルしていますが、気づいていない人も多いはずです。お弁当をはじめ、各コーナーの見え方を考え、個々の商品の色やデザインの統制を図っています。

 その結果、売り場で各PB商品が面となって際立ち、広告しなくても売れ始めたのです。コンビニにそれまでなかったデザインという視点を持ち込んだことで、PBはナショナルブランドの商品よりクオリティーが低いのではといったイメージも払拭され、過去最高の売り上げが続いています。