クラウドサービスの場合、自分にとって必要な機能を選び、必要な期間だけ選んで契約できるのが一般的だ。こうしたサービスでは当たり前になった考え方をハードウエア製品に持ち込もうとする動きが出てきている。モノ作りの常識ががらりと変わるかもしれない「機能の時間売り」について今回は考えてみよう。

「機能の時間売り」とは、サブスクリプション型サービスでは一般的になった考え方だ。この概念をハードウエアの世界に持ち込むと…(写真/Shutterstock)
「機能の時間売り」とは、サブスクリプション型サービスでは一般的になった考え方だ。この概念をハードウエアの世界に持ち込むと…(写真/Shutterstock)

 あるメーカーが販売するプロ用ビデオカメラは、変わった売り方をしている。通常プロ用ビデオカメラは、プロが求める機能別にバリエーションをそろえる。ところがこの製品には、バリエーションが一つしかない。なぜならば、プロが必要とするほぼすべての機能をハードウエアとして盛り込む「最小公倍数的な設計」になっているからだ。かといって、とてつもなく高価なわけではない。それはなぜか。

 従来のプロ用ビデオカメラが複数ラインアップされているのは、プロカメラマンは撮影目的に応じて必要とする機能が異なるためだ。サッカー向けには「4K撮影」、フィギュアスケート向けには「スローモーション撮影」といった具合に特化したハードウエアをメーカーは開発し、機能別に専用モデルを発売するのが定石だった。

 冒頭の製品の場合、あらかじめ全部入りでハードウエアを搭載しているので、使いたい機能を利用する際に都度購入できる仕組みになっている。要は、時限的なライセンス方式を採用しているのだ。プロカメラマンにしてみれば、請け負った業務ごとに必要な機能を選び、最小限の時間だけ区切って経費で購入できることになる。

 「機能の時間売り」は、製品がネットワーク対応になったからこそ実現可能になった。パソコンやスマホで月額課金のサービスを契約するように、専用サイトでソフトウエアを購入することで特定の機能が使えるようになる。クラウドサービスでは、必要な機能をカフェテリア方式で必要な期間だけ選んで契約するのはもはや一般的になっている。この流れがハードウエア製品にも波及し、同様の利便性をもたらす動きが出てきたことを示す好事例と言えよう。

耐久消費財メーカーはどう見ているのか

 機能の時間売りの話を耐久消費財メーカーにぶつけてみると、担当者の議論が二分していて興味深い。ポジティブに評価する場合、必要な機能を必要な分だけ売れる効用に加えて、在庫を減らすことを期待する声がよく上がる。同じ製品でも、機能が異なれば違う型番を付与することから、耐久消費財メーカーは在庫管理に少なくない手間をかけている。売れ筋を読み違えれば、特定の型番で不要な在庫の山を抱えてしまうことになる。