中国にはたくさんのデータがある

 記者が「なぜ中国はAI先進国になれたのか」と質問してみた。

 余氏は「中国にはたくさんのデータがあって、ディープラーニングなどのAIアルゴリズムに食べさせる学習データが多い点は非常に有利だ。中国は毎年数多くの若者を海外に送り出しているし、中国ではソフトウエアなどの先端技術にアクセスしやすい」と答えた。郭氏も「海外に留学してさまざまな国のコンピューターサイエンスを学ぶことができる。そうした人材の数は日本よりも多い」と回答した。一般に中国では、毎年400万~500万円の留学費用をまかなうことができる裕福な家庭が日本よりも多く、大学院や博士課程に進む場合は、学校や政府から奨学金が出る。

 赵氏は「周囲の友人は、自分に対して敬意を示してくれており、自分もINFERVISIONに加わりたいと言ってくれる。そうした友達などがINFERVISIONに続々と入社してくる」と話す。

日本市場も狙う

 INFERVISIONは日本市場も狙っており、既にユーザーもいる。INFERVISIONのAI医療画像診断支援システムは、既に日本でも活用されている。国内の心臓MRI検査で約10%のシェアを持つ医療法人社団CVIC(東京・新宿)心臓画像クリニック飯田橋(東京・新宿)では、心臓のCT画像に映り込む肺の画像をINFERVISIONのAI医療画像診断支援システムに通して、正常範囲外を指摘されたら、放射線診断専門医に肺のCT画像を転送する試用を開始している。

心臓画像クリニック飯田橋では、心臓のCT画像に映し出される肺(一部)のCT画像をINFERVISIONのAI医療画像診断支援システムに送る。AIが異常だと指摘する場合、肺の専門医に肺のCT画像を転送する

 CVICの運営会社に相当するCVイメージングサイエンス(CVIS)の古澤良知代表取締役は「CVICの医師は循環器専門医。心臓の診断に専念させたいので、肺に費やす手間と時間をAIで削りたい」と話す。古澤代表がINFERVISIONの存在を知ったのは16年。東京ビッグサイトで行われていたコンピューター系の展示会で、肺のCT画像を見せていたINFERVISIONのブースに目が留まった。

 INFERVISIONの担当者がとても自信たっぷりで、古澤代表が「ディープラーニングを使っているの?」と尋ねると、「そうだ」と答えた。「売っているの?」と問うと、「そうだ」と即答。「じゃあ、使うよ」と古澤代表が応じて、INFERVISIONとのつき合いが始まった。「薬事認可は下りていないことは分かっていたが、とにかく医師の負担を軽くできるのではないかと思い、試用に踏み切った」 と古澤代表は説明する。

 Infervision.Japan代表取締役の周暁妍(Xiaoyan Zhou)は、「日本のさまざまな医療機関で当社製AI医療画像診断支援システムの導入を検討していただいている。名前を公表できる機関はCVICぐらいだが、18年12月時点で既に3つの機関が導入している」と説明する。

第2回
農業の生産性40倍向上、AI自動運転 中国ユニコーンが狙う日本