競合排除意識の高さからかつては「誰も使えない広告サービス」と業界で揶揄された楽天。その楽天が広告事業に本腰を入れ始めた。豊富なグループのデータとAI(人工知能)を活用した技術力で広告市場に攻勢をかけ、2021年に売上高2000億円を目指す。かつての汚名を返上できるか。その戦略を詳細に解説する。

 「誰も使えない広告サービス」

 かつて、楽天の広告サービスは業界内でこう揶揄された。ECモール「楽天市場」に出店しない外部の広告主が楽天の広告サービスを利用する場合、「楽天の競合に当たらない」という条件が課せられたのがその理由。楽天の事業領域は物販、銀行や証券といった金融、旅行予約と多岐にわたる。いずれもデジタルマーケティング先進企業が多い業態だ。その誰もが楽天の競合に当たるため、広告サービスを使えない。ごく限られた広告主しか利用できない閉じたサービスだったわけだ。以前の楽天にとって、広告事業の重要度がいかに低かったかがうかがい知れるエピソードだろう。

 その楽天が今度は広告事業に本気だ。17年に電通との共同出資会社の楽天データマーケティングを設立。同社の発表会で、楽天の三木谷浩史社長は「10年で業界をリードするようなインテリジェントな組織になると思っている」と楽天のデータを活用した広告事業への期待を口にした。楽天データマーケティングの設立に伴い、ヤフーの広告事業の責任者やグーグルの日本代表を務めた、有馬誠氏を楽天副社長執行役員に迎えた。その有馬氏が楽天データマーケティングの社長に就き、楽天グループのビッグデータを軸にしたマーケティングソリューション「Rakuten Marketing Platform」を開発。広告事業を強力に推進する。

 「楽天市場の購買データや、『楽天スーパーポイント』を軸とした提携店舗での購買データは、我々の独自のデータとなり、他の企業にはまねできない。(広告事業としては後発である)EC事業者でも、一定のポジションを築けるはずだ」と有馬氏は意気込む。

 さらに、18年11月1日には米デジタル広告事業のアドロールグループと共同出資会社の楽天アドロールを設立。同社社長の香村竜一郎氏は、有馬氏とグーグル、アドロールの日本法人で共に働いた経験を持つ。かつての同士が再び手を組み、9900万を超える楽天IDにひも付いて蓄積する購買データやサービス利用データと、アドロールの広告技術を組み合わせる。これらの取り組みにより、既存のプレーヤーとは一線を画す広告サービスを開発し、楽天経済圏を広告市場にまで広げることを狙う。