デザイン思考を社内に定着させようとすると、さまざまな障害が立ちはだかるはずだ。最大の課題は、社内から賛同を得られにくいこと。プロジェクトメンバーはデザイン思考のメリットを十分に理解していても、社内の態度は冷たい。

「デザイン」という用語を「顧客志向経営」と言い換えることで、ビジネスパーソンの関心を引くことに成功
「デザイン」という用語を「顧客志向経営」と言い換えることで、ビジネスパーソンの関心を引くことに成功
NTTコミュニケーションズの一部の営業担当者が使用する「共創ツール」は、顧客と一緒に遊び感覚でアイデアを出し合える、ボードゲームのようなツール。架空の会社とターゲットを設定し、ターゲットの悩みを解決するため、3つのカードをランダムに組み合わせてアイデアを考える

 デザイン思考と言っても「なぜデザインなのか」「当社はデザインとは関係ない」といった反応が返ってくる。これではプロジェクトメンバーのモチベーションも下がるだけだ。NTTコミュニケーションズも同様な壁に直面していたという。それが今では社員はもちろん、経営トップまで巻き込んだ動きにまで発展している。数人で始めた草の根的なプロジェクトが、見事に花開いた。なぜ、社内から賛同を得られるようになったのか。それは社内の意識を変えるためにもデザイン思考を活用したからだ。

 IT企業の同社は当初、ユーザーに根差した新しい商品やサービスを開発するため、デザイン思考に着目した。営業活動にも生かし、新たなソリューション開発につなげようとした。

 「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインに向けた活動として、デザイン思考に取り組んだ。2011年ごろに自分を含む4人のチームを立ち上げ、社内に浸透させようとした」(経営企画部デジタル・カイゼン・デザイン室の金智之担当課長)。しかし、デザイン思考を根付かせるのは容易ではなかった。デザインという横文字に対してネガティブな人も多く、啓発できる雰囲気ではなかった。コツコツと実績を積み上げていたが、15年に転機が訪れた。当時の経営トップが興味を持ったことから、トップダウンでほぼ全部署への展開が決まった。「全事業部にUXリーダーを立てて、社内でUXデザインを推進しよう」となった。これでスムーズに回ると思ったが、そう簡単にはいかなかった。

 デザイン思考に知見がある社員が少なく、新しく人員を投入するほどの余裕もないため、限られたリソースの中でやりくりするしかなかったからだ。各部門がデザイン思考を推進しようとチームに依頼が集中し、とても手が回らない。せっかく持ち込まれた依頼も対応が進まず、社内の前向きな気持ちが次第に消えていったという。

NTTコミュニケーションズはデザイン思考の浸透まで紆余曲折があった
NTTコミュニケーションズはデザイン思考の浸透まで紆余曲折があった
今では経営トップも交えてワークショップを開始。営業ツールの開発や新規事業の開拓につながった