デザイン思考とは何か

「理解」「発想」「試作」を素早く行い、新たな発想につなげる
「理解」「発想」「試作」を素早く行い、新たな発想につなげる

優秀なデザイナーやクリエイティブな経営者の思考法をまねること

 デザイン思考とは文字通り、デザイナー的に考えることである。デザインをビジネスに活用すればイノベーションを起こせるのではと、世界中の大手企業が注目している。なぜ今、デザイン思考なのか。それはこれまでのやり方では新しい発想を生み出すことに各社が限界を感じているからだ。デザイン思考が重視するのは、生活者である人間の姿だ。生活者がどんな行動を取り、どんな考え方をするか、どんな感情を示すかなどを詳細に観察し、時にはインタビューすることで何を求められるのかを把握することが、発想の起点になる。

 ニーズを理解できれば、簡単なスケッチを描いて示し、ニーズと合致するかを検証するデザイナーもいる。求められているものが明確になるまで、こうした作業を行きつ戻りつしながら、何度も繰り返す場合もある。

 こうしたデザイナーの思考法にできるだけ近づくために、デザイン思考の手法をプロセス化した方法論が、米スタンフォード大学の「ハッソー・プラットナー・インスティテュート・オブ・デザイン」、通称「d.school」が提供しているものだ。今ではd.schoolの手法だけでなく、多くのデザイナーやクリエイターが自分流の「デザイン思考法」を打ち出している。ただ、どのデザイン思考法も根幹は同じ。デザイナーたちが重視するのは、生活者である人間の姿である。既存の技術やマーケットをベースに論理的に発想するやり方を「ロジカル・シンキング」と呼ぶなら、デザイン思考は発想の起点が全く異なるのだ。

 現状を分析・理解してアイデアを考え、プロトタイプを作って検証して再度、現状を分析したり考えたりする、といった思考法を優秀なデザイナーらは「頭の中」で無意識に行っているはず。だからルールやプロセスとして説明しにくいし、明確な定義も言いにくい。「デザイン思考は分かりにくい」とされるのは、このためだろう。あえてデザイン思考について定義すると「人間を中心に発想すること」といったシンプルな表現になってしまう。

サイクルを何度も繰り返す

 デザイン思考の方法論をまとめると、上図のように集約できるだろう。

 簡単に言えば、まずは生活者の状況を理解するため、現場の動きを詳細に観察する「フィールド観察」を行ったり、「インタビュー」を実施したりすることが起点だ。分かった事実を基に議論して多くの意見を出し、その後は意見を収束させて、課題を浮き彫りにしていく。こうした「議論の発散」や「議論の収束」は、デザイン思考のさまざまな場面で必要になる。

 さらに課題の解決に向けて「ブレーンストーミング」などの手法でアイデアを出していく。解決策をまとめていき、試作品の開発に移る。最初は紙でもいいからすぐに試作品を作り、イメージを確認することが重要だ。生活者に見せるなどして試作品を検証し、不具合があれば再度試作品を作ったり、解決策を検討したりする。こうしたサイクルを何度も繰り返すことで、次第に完成へと近づけていくのである。生活者の本音を的確に把握して発想すれば、たとえ技術やマーケット上の「常識」とは異なっても、生活者の本当の利便性向上につながるものが出来上がるに違いない。