サントリー食品インターナショナルの主力ブランド「サントリー 天然水」は、2018年の国内清涼飲料市場で販売数トップに躍り出た。躍進に一役買っているのが、スノーピークと共同開発した無糖炭酸水だ。サントリー食品執行役員の沖中直人氏がスノーピークとの共同開発の舞台裏を語る。

沖中直人氏
沖中直人氏
サントリー食品インターナショナル
執行役員
ジャパン事業本部戦略企画本部長兼コミュニケーション本部長兼戦略企画本部イノベーション開発部長

「サントリー 天然水」(以下、天然水)はサントリーグループにとってどのような位置付けのブランドなのでしょうか。

沖中 直人氏(以下、沖中)我々のグループは、「水と生きる」というコーポレートメッセージを掲げています。我々の飲み物の基本にはまず水があり、そこに付加価値を加えていくことで成立しています。

 サントリーの祖業はウイスキー生産です。創業者の鳥井信治郎が、山崎蒸留所を開設するとき、まずは水が良い場所として大阪府三島郡島本町山崎を選びました。創業時から事業にとっては無くてはならないものとして水を重視してきました。天然水は、そうした創業以来の精神を象徴するブランドです。

天然水の販売数量は順調に伸びているのでしょうか。

沖中 はい。12年から5000万ケース以上増加しています。急速に販売数が伸びているのです。そして18年には天然水ブランドで、前年比109%で過去最高の1億1730万ケースを達成しました(飲料総研調べ)。この販売数量は、国民1人当たり年間20本程度購入したことになります。国内清涼飲料業界では、1990年から日本コカ・コーラの「ジョージア」がナンバーワンに君臨していました。昨年ようやくそれを上回ることができました。

 企業別のシェアで見ても、サントリーのシェアは23%で、トップのコカ・コーラは、28%。その差は5%にまで迫っています。20年前は弊社が10%ほどで、コカ・コーラは30%ほどでした。

「サントリー 南アルプスの天然水」(550ml)
「サントリー 南アルプスの天然水」(550ml)

天然水が大きく成長した理由をどのように考えていますか。

沖中 それは、スノーピークの山井太社長と知り合ったきっかけと関係があります。

 3年ほど前に社内の勉強会に山井社長を招き、スノーピークのミッションについて講演していただきました。文明が進化すると人間性が低下するという話が強く印象に残りました。つまり、文明が進化すると人は都会に暮らすようになり、高層ビル内で働き、高層マンションに帰る。アスファルトの上を歩いて、スマートフォンを四六時中操作している。そうした生活をする人たちは、週末になると人間性を回復するために、キャンプ道具をクルマに積んで、キャンプ場に出かけるのです。

 人類の歴史を見ると、ある時期までは森の中で暮らしていました。約1万年前に農業を始めて、穀物などの高カロリーな食材を生産するようになった。そうしたイノベーションを経て、人々が都会に暮らし始め、しばらくして、都会への集中が起こりました。やっぱりどこかに無理があるのではないでしょうか。こうした都会で損なわれた人間性を回復するために、スノーピークはキャンプという手段を提供しているという話を聞いたときに、我々と同じだと思いました。

 都会で働いている人に、天然水を飲んだときに感じる気分についてアンケートを採ると、「きれいな川が流れている山の風景が、頭の中に浮かぶ」といった答えが多く返ってきます。

 都会で生活する人は、清れつな水が流れている雪山の風景を日常的に見ることは難しいでしょう。そうした風景を想起させる天然水の価値を、我々は「清れつなおいしさ」と定義しています。清れつとは、冷たくて澄んでいるという意味です。そうした清れつな水が流れている場所にはマイナスイオンが満ちています。その空気を体に取り込みたいという欲求と近年の健康意識の高まりが、天然水の販売を押し上げていると考えています。

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