新たなテクノロジーやビジネスモデルの登場によって、大幅に進化しつつある食分野。本特集は、食品にとどまらず、家電、小売り、AI・IoTといったテクノロジー分野などを幅広く巻き込んだ近未来の食の革命、「イノベー食(ショク)」の衝撃を先進事例から読み解く。第1回は、「完全栄養」という斬新なコンセプトで、パスタやラーメン、パンなど主食のアップデートを仕掛ける日本のスタートアップ、ベースフードを取り上げる。

1食分の栄養素が丸ごと含まれている完全栄養めんを使った、健康ラーメンがデビュー
1食分の栄養素が丸ごと含まれている完全栄養めんを使った、健康ラーメンがデビュー

 近年、爆発的に広がっている糖質制限ダイエットの影響で、日本の“国民食”が大打撃を受けている。その筆頭が、ラーメンだ。飲み会帰りの「締めの一杯」は、もはやギルト(罪悪感)フードの象徴のようになってしまった。しかし、安心してほしい。長らく進化の乏しかった食の分野で今、現代人が抱える健康問題、古い流通システムが引き起こす飽食の時代のフードロス問題、そして世界の人口爆発による食糧不足問題・環境破壊など、あらゆる課題解決に向けて先進スタートアップによる食の革命「イノベー食(ショク)」が進行中だ。

 世界初の完全栄養ラーメン――。

 従来の不健康なイメージを覆す、こんな衝撃メニューを2018年12月10日から本格展開し始めたのが、濃厚な煮干しスープを売りにするラーメンチェーン「ラーメン凪」(取り扱いは10店舗)だ。16年設立のスタートアップであるベースフード(東京・目黒)が、完全栄養をうたう生めん「BASE RAMEN」を開発。モチモチとして食感豊かな雑穀めんには、チアシード(オメガ3)や真昆布粉末(葉酸)、ビタミンなどの栄養素材が計算ずくで練り込まれている。厚生労働省の「栄養素等表示基準値」に基づいて、過剰摂取が懸念される炭水化物(糖質)や塩分を抑えながら、現代人に必要な1食分の29種類の栄養素が過不足なく含まれているのだ。

BASE RAMEN1食当たりの栄養素(ゆで調理後、推定値)と、厚生労働省の「栄養素等表示基準値」の比較
BASE RAMEN1食当たりの栄養素(ゆで調理後、推定値)と、厚生労働省の「栄養素等表示基準値」の比較
雑穀を練り込んでいるため、茶褐色のBASE RAMEN。ベースフードが展開している完全栄養パスタ「BASE PASTA」を改良し、切れにくく、つるつるとのど越しのいいめんに仕上げた
雑穀を練り込んでいるため、茶褐色のBASE RAMEN。ベースフードが展開している完全栄養パスタ「BASE PASTA」を改良し、切れにくく、つるつるとのど越しのいいめんに仕上げた

 この完全栄養めんが、20種類以上の煮干しをブレンド、かつ減塩設計にした凪の濃厚スープによく絡む。既存のラーメンチェーンなどが“アリバイ的”に展開してきたコンニャクめんに代表される糖質オフめんと違って、BASE RAMENは穀物の風味がしっかり堪能できるのも売りだ。それでいて通常のラーメンに比べて糖質は50%オフ、不足しがちな1食分の栄養素も1杯でコンプリートできる。この完全栄養ラーメンはベースフードのネット直販サイトでもスープセットで販売する他、今後、凪以外のラーメンチェーンにも広げていく計画。しばらくラーメン店から遠ざかっていた健康フリークも女性客も、誰もが気兼ねなく食べられるとあって、日本のラーメン文化が再び息を吹き返す起爆剤になりそうだ。

 ベースフードがターゲットにしているのは、ラーメンだけではない。目指すのは、「時代の流れに合わせて、手付かずだった『主食』を健康で簡単、おいしくアップデートすること」(橋本舜社長)であり、完全栄養と掛け合わせたそのコンセプトは、世界でも類を見ないものだ。一体どんなプロジェクトが進行しているのか、今回、日経クロストレンドの取材で初めて明らかになった。