※日経トレンディ 2019年1月号の記事を再構成

店舗に出向いて採寸を受け、自分にぴったりの服を作る。こんな常識を一変させたのが2017年末に発表された「ZOZOスーツ」だ。現時点で110万枚以上を配布し、「服」のカスタムオーダーを大衆化したが、これは序章にすぎない。特集の第9回「アパレル」業界。本命は、「靴」のパーソナライズ化だ。

 店舗で足のサイズを計測し、“ジャストフィット”した靴を発注するサービスは以前からある。2020年以降は超手軽、かつ超短納期が実現する見込みだ。

 既に「スマホを活用した足型の計測技術は、ほぼ完成の域」とZOZOの前澤友作社長は語る。足は左右のサイズが1~2cm違うのは珍しくない。前澤氏はここに目を付け、左右の足型にぴったりの靴を提供できるPB商品を展開する構想があるという。

 さらに、アディダスが11月に発表したミッドソール「アディダス 4D」は、一歩先の未来を見せた。ついに3Dプリンター製ソールの“量産化”に成功し、個人が形状を自由自在にカスタムした靴を手に入れる土壌が整ったのだ。軽さを備えた網目状の構造は、各部の反発力、衝撃吸収性を調整できるため、運動のクセに合わせて“機能性”をパーソナライズすることも可能だ。

 アディダスは、17年から靴の製造工程をデジタル化した超短納期工場「スピードファクトリー」を設立しており、一部のアスリート向けに、運動時のデータを計測したうえでカスタムシューズを提供している。アディダス 4Dも同工場に組み込まれており、究極のオーダーシューズを作るサービスが日本に上陸する日も遠くはない。

ZOZOは足型の計測技術の開発を進め、完成が近いという
ZOZOは足型の計測技術の開発を進め、完成が近いという
アディダスは3Dプリンターによってミッドソールの製造を劇的に早めた
アディダスは3Dプリンターによってミッドソールの製造を劇的に早めた

“服を選ぶ”がプロ、AI任せに

 ZOZOやアマゾンが研究を推し進めているのは、「似合うの数値化」だ。17年からアマゾンは、カメラ端末「エコールック」を使った、「スタイルチェック」を米国でスタート。カメラで写したスタイルのどちらがよいかを、AI(人工知能)がアドバイスしてくれる。

 プロやAIがコーディネートを提案する「パーソナルスタイリスト」の需要は、急拡大中だ。経営コンサルタントの竹内謙礼氏は、「情報過多の時代に商品を選ぶ煩わしさから“解放”されたいユーザーも多い」と語る。「エアークローゼット」では、月額レンタル制で服を提供するシェアサービスと合わせて、スタイリストのアドバイスが受けられる。15年のサービスイン直後には2万5000人の登録希望者が押し寄せ、現在の会員数は20万人を突破した。

 未来のアパレル業界では、実店舗もあり方が変わる。EC化比率の増加を見込み、「試着専門店」が各地に広がる見込みだ。GUが11月にオープンした次世代型店舗では自らのアバターを作り、画面上でさまざまな服を試着できるサイネージ「GU スタイル クリエーター スタンド」を用意。店頭販売は行わない仕組みだ。

 工場の空き時間を“シェア”することで、新しいビジネスも生まれている。工場同士をつなぎ受注生産を行うプラットフォーム「シタテル」は、格安で「超小ロット生産」を請け負う。個人でも利用でき、アパレル業界への参入ハードルが大きく下がる可能性がある。

技術がファッションを進化させる

 ユニクロを筆頭に服の低価格化が進んだ2000年代から一転して、付加価値を付けるファッションテックが主流になり始めている。「シェア」することで、服を所有するという従来の常識が覆される。「デザイン」は、電子ペーパー技術によってアプリ操作で色やデザインを一新できる。

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