ファミリーレストラン「Caféレストラン ガスト」などを運営するすかいらーくホールディングスは、約3000店の全店にQRコード決済を導入することを決断した。同社取締役常務執行役員CMO(最高マーケティング責任者)兼CTO(最高技術責任者)の和田千弘氏に、その狙いを聞いた。

和田千弘氏
和田千弘氏
すかいらーくホールディングス 取締役常務執行役員CMO兼CTO (写真/花井智子)

 すかいらーくホールディングスは、2018年11月29日にQRコード決済を、「ガスト」や「バーミヤン」などで提供する料理の宅配サービスに導入した。決済サービスに、「楽天ペイ」と「LINE Pay」を採用し、15店で開始。19年末を目途に、これを約1000店に拡大する。店舗では、卓上タブレットでのQRコード決済を試験導入し、グループが運営する約3000店のレジでQRコード決済に対応する。

 さらに、同社は18年12月1日付でIT本部を新設した。和田氏は、従来のマーケティング本部に加え、CTOとしてIT本部を兼務する。近年、マーケティングとテクノロジーの結びつきは一層密接になっており、和田氏を中心にマーケティング戦略とIT戦略を連動させることで、競争力を高める考えだ。

宅配サービスでQRコード決済を導入した理由を教えてください。

現在、我々の宅配事業は、急成長しています。2018年には宅配事業の売り上げが、対前年で15%増えました。料理の宅配サービスは、一人暮らしの高齢者が利用しているイメージがありますが、実は、家族の夕飯やホームパーティー用の料理など多様なニーズがあります。そのため、店舗に比べて、客単価が高いのが特徴です。メニュー数は通常よりも少ない70程度で、提供している店舗は700ぐらいなので、これを拡充すれば、まだまだ成長できる余地があります。

 一方、宅配スタッフを募集しても、集まりが悪いという問題があります。その原因の一つが、現金を扱うことにあると思います。料理を届ける時刻が夕方以降になると、現金を受け取る場所が暗く、スタッフがお釣りの金額を間違えて渡すことが増えてきます。こうした現金を扱うことに対する心理的な負担が大きいようです。宅配サービスの支払いにキャッシュレスを導入することで、現金を扱うという抵抗感を下げられれば、求人への応募が増えると考えています。

 ユーザーの視点から見ても大きなメリットがあります。宅配サービスを利用したくても、手元に現金がない場合もあります。QRコード決済に対応していれば、こうした場合にも注文できます。

 宅配サービスの利用者は、若い人から高齢者まで年齢層は幅広く、ITに対するリテラシーのレベルもさまざまです。そのため、電子決済に抵抗を感じる人もまだ少なくないと思います。導入に際して、社内でいくつかの決済方式をテストし、意見を集めました。その中で、分かりやすく、安心感があるという声が多かったのがQRコードでした。スマートフォンのカメラを使って、手元で操作できるので、安心できるのだと思います。心理的な抵抗は、クレジットカード決済とそれほど変わらないようです。

安心感を重視して決済事業者を選定

多くの決済サービスがある中で、「楽天ペイ」と「LINE Pay」を選んだのはなぜでしょうか。

楽天とLINEはやはり身近で、みんなが知っているブランドだからです。新しいサービスは、ユーザーにとっての安心感があり、「じゃあ使ってみよう」と思ってもらえることが大切です。決済手数料が比較的安い点もメリットです。ここ2、3年で決済手数料が急速に値下がりしているとはいえ、高い料率を設定している事業者も中にはいます。

将来的には、店舗での決済にもQRコード決済を導入するのでしょうか。

19年末を目途にテーブルに置いたタブレット端末とレジでのQRコード決済に対応する予定です。タブレット端末を使えば、注文から決済までテーブルで完了し、食事の後はレジに並ばずにお店を出られます。将来的には、このタブレット端末で、お客様を認証し、過去の購買履歴などと照合することで、時間帯に合わせたおすすめメニューを表示できる機能も搭載したいと考えています。またキャッシュレス決済のみに対応した店舗を試験的に立ち上げることを検討しています。