不正転売防止などを目的に採用する興行主が増えている電子チケットサービス。プロ野球界での先駆者が埼玉西武ライオンズだ。同球団は2018年2月に、playgroundが運用する電子チケット発券サービス「Quick Ticket」を本格導入。ウェブでのチケット購入者の約20%が電子チケットに移行した。試合前後の情報発信など来場者向けサービスにも活用する。

埼玉西武ライオンズはplaygroundが運用する電子チケット発券サービス「Quick Ticket」を導入

 西武ライオンズが採用したQuick Ticketはブラウザーベースの電子チケットサービスだ。利用者がチケットを購入すると、電子チケットをダウンロードするためのURLが、LINEやFacebook Messenger、メールなどで送信される。利用者はこのURLをタップして、チケットを取得。イベント当日、入場時にチケットの画面をスタッフに見せる。

 スタッフはチケット画面を確認し、専用のスタンプを画面に押し当てる。スタンプの突起部分とチケットに組み込まれた座標情報を照合し、チケットが本物と認められれば券面に「使用済み」のスタンプが押されるという流れだ。

Quick Ticketの利用イメージ。LINEなどで送られてきたURLをタップしてチケット券面を表示。「チケット利用」をタップする
スタッフが券面にスタンプを押し当てると、使用済みになる。照合には、画面の接触点を座標として認識するスマホの機能を使っている。スタンプ側は電力が不要なため、入場口周辺にゲートを設置したり電源を用意したりする必要がない

 「導入の決め手になったのは、Quick Ticketがブラウザーベースで運用できること」と西武ライオンズ 事業部の吉田康治マネージャーは明かす。実は西武ライオンズでは、ずいぶん前から電子チケットの導入を検討していた。目的は不正転売の防止に加え、チケットの即時発行、入場作業の効率化だ。紙の入場券は発券が必要なうえ、入場者数と半券の枚数の照合など管理も煩雑になる。球場には毎試合、3万人近い人が押し寄せるのだから、作業量は膨大だ。

 「ただ、(現在電子チケットで主流の)アプリでの運用は避けたかった」(吉田マネージャー)。プロ野球の観戦者は、年齢もITへの知識レベルもバラバラだ。スマホにアプリをインストールし、チケットをダウンロードするといった操作が問題なくできるとは限らない。中には、「友人に誘われて来た」という人もいる。そんなライトな野球ファンにアプリのインストールを強いるのは難しい。吉田マネージャーは「コアなファン向けにはアプリもいいと思う。だが、チケット購入、入場だけなら、障壁は低いに越したことはない」と説明する。

 アプリの構築や運用に伴うコストが小さいことも利点だった。Quick Ticketの場合、チケットの販売は連携する既存のチケットエージェンシーを介しており、発券だけが電子チケットとなるので、西武ライオンズ側のシステムに変更は不要だ。スタンプは1個2000円程度だという。入場時はハンコを押すように画面にスタンプを押し当てるだけなので、スタッフに特別な教育も必要ない。

 こうした点を踏まえ、西武ライオンズは2017年のシーズン途中に当たる7月に本拠地・メットライフドームの試合にQuick Ticketを導入。2018年のオープン戦が始まる2月に本格運用を開始した。2018年のシーズン終了時点では、Webでのチケット購入者の約20%が電子チケットを利用するようになったという。

埼玉西武ライオンズの電子チケット券面
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