中小企業がデザイナーと組んで開発したヒット商品、ウエアラブルメモ「wemo」。腕に巻いて使用するシリコンバンド型のメモが、マーケティング予算が限られているにもかかわらず、発売以来1年間で10万本の受注を獲得。海外でも販売が決まった。現在進行形のプロジェクトの全貌を追う。

 前回は、wemoの複数のビジネスモデルについて書きました。今回はwemoバンドタイプ以降の製品展開についてお伝えします。

【2018年4月9日 出展に向けて】

 wemoがブレークするきっかけになった「国際 文具・紙製品展(以下ISOT)」に18年も出展を予定していた。その準備にそろそろ取り掛からなければならない。

 この展示会では「日本文具大賞」というアワードが主催されており、1年以内に発売された文具が対象となる。このアワード受賞の一番のメリットは、テレビで露出する可能性が非常に高いことにある。キー局のニュース番組や情報番組が、こぞって取り上げていたことを17年に知った。wemoにとってはまたとない機会のため、応募を予定していた。

 運良くアワードを受賞できたとしても、それだけでは展示内容は弱いと感じていた。なぜなら、17年と展示内容がほぼ変わらなくなってしまうからだ。

 また、この展示内容の検討に限らず、wemoの次なる展開が重要だと考えていた。wemoが「一発屋のアイデア商品」なのか、それとも「ユニークな文具ブランド」として存在できるのかは、次の新製品に掛かっているといえる。

 そう考えると、新製品を複数展示するのが理想的ではないか、という結論となった。展示コンテンツを拡充するだけでなく、wemoのブランドイメージを大きく押し広げることができ、さらに新製品の反応をテストすることができれば、一石三鳥である。問題は、新製品が企画できるかどうか……。

【4月16日 新製品企画】

 新製品のアイデアは予想に反して、すんなり出すことができた。wemoのコンセプトである“いつでも どこでも かける おもいだせる”と“油性ボールペンで書けて消しゴムで消せるシリコン製メモ”を要件に、2つの製品を考えた。

 1つは、ケースタイプと呼んでいる、スマートフォンのケースをシリコンメモ化するというアイデアである。

 きっかけは、以前、シールタイプからのピボットを検討(詳細は連載第4回参照)した際のノートを読み返したことである。ウエアラブルメモの用途をパターン分けした際の結果の一つである“リマインダー”が目に入ったときにひらめいた。

図1:当時検討したウエアラブルメモのパターン (C)kenma Inc.
図1:当時検討したウエアラブルメモのパターン (C)kenma Inc.

 バンドタイプの弱点の一つは、わざわざ手に巻かなければならないことだと考えていた。wemoの使用がマストのユーザーには問題ないが、必ずしも必須でない人にとってはハードルが高い。

 この弱点を解決すれば、より多くの人に使ってもらえるという確信があった。なぜなら、発案者である私がヘビーユーザーでない原因は、まさにこの“わざわざ巻く”ことにあるからである。

 それに対してスマートフォンケースは、肌身離さず携帯しているので、この問題を解決することができる。

図2:ケースタイプを思いついた時に浮かんだシーン(C)kenma Inc.
図2:ケースタイプを思いついた時に浮かんだシーン(C)kenma Inc.

 実はこの企画を出すことに、少し迷いがあった。クライアントだけでなく、社内メンバーからも「これはウエアラブルなのか?」という指摘があったからだ。

 スマートフォンケースなので、もちろん「ウエアラブル」ではないのだが、そのときは「スマホにとってはウエアラブル」とか「スマホも身体の一部」のようなことを強引にこじつけて、苦し紛れに反論していた。

 それでも出すことを決めたのは、前述したwemoの世界観を押し広げ、コンセプト(いつでも どこでも かける おもいだせる)を強化できるという点で全員が一致したためである。そして何より、wemoユーザーの間口が広がるのを想像できたことが大きい。

 後日談であるが、今日に至るまで、ECサイトでのレビューやSNSのコメントなど、アクセスできるものにはほぼ全て目を通しているが、「ウエアラブルでない」という指摘は一つもなかった。

 もう1つのアイデアは、パッドタイプと呼んでいるシリコン製の少し大きめの付箋メモである。付箋のように裏面は粘着性能を持たせ、ノートパソコンなどに貼れるものを考えた。コスモテックはコーティングと共に粘着機能の開発が十八番(おはこ)なので、何度でも貼って剥がせる再剥離を実現できる見込みがあったことが、このアイデアの採用を後押ししている。

 このアイデアは、スマホケースがOKなら他のデジタル端末でも、というところから発想した。オフィスの机回りを観察すると、付箋が「リマインダー」の役割を担っていることが多く、ノートPCやデスクトップPCのディスプレーの隅に貼られている。この役割をwemoで代替できないかと考えた。

図3:タッチパッド横に貼ることを想定して企画 (C)kenma Inc.
図3:タッチパッド横に貼ることを想定して企画 (C)kenma Inc.
図4:同様にディスプレーに貼って使用することを想定 (C)kenma Inc.
図4:同様にディスプレーに貼って使用することを想定 (C)kenma Inc.

【6月19日 日本文具大賞ノミネート】

 ISOTの事務局から、日本文具大賞の機能部門の優秀賞に選出されたとの連絡が入る。詳細を確認すると、wemoを含めて5製品(デザイン部門も同様に5製品)が選出され、ISOTの初日にその中から大賞が決まるとのこと。

 これでTV番組での露出の可能性が格段に上がったので、ビジネス的にもとてもありがたい。

【7月4日 ISOT初日】

 17年に比べればスムーズに準備ができ、問題なく初日を迎えることができた。ケースタイプとパッドタイプの試作も、コスモテックの開発力のたまものにより無事、展示に間に合った。来場者の反応がとても楽しみである。

図5:18年度ISOTの展示ブース (C)kenma Inc.
図5:18年度ISOTの展示ブース (C)kenma Inc.

 来場者に足を止めてもらうために、バンドタイプを300本挿す、というアイデアを今回も採用している。17年は壁に挿していたが、今年は台上に挿すことにした。

図6:18年は台上に300本挿した (C)kenma Inc.
図6:18年は台上に300本挿した (C)kenma Inc.

 午後からは、いよいよ文具大賞の発表であった。コスモテック高見澤友伸社長と共に参加したが、残念ながら大賞を受賞することはできなかった。しかし、優秀賞に選ばれていることもあり、17年以上の人だかりが展示ブースにはできていた。また、キー局の情報バラエティー番組からもいくつか取材依頼があり、順風満帆であった。