中小企業がデザイナーと組んで開発したヒット商品、ウエアラブルメモ「wemo」。腕に巻いて使用するシリコンバンド型のメモが、マーケティング予算が限られているにもかかわらず、発売以来1年間で10万本の受注を獲得。海外でも販売が決まった。現在進行形のプロジェクトの全貌を追う。

中小ものづくり企業発 大ヒット商品の裏側 全貌公開!

 みなさま、初めまして。kenmaというデザイン会社の代表を務めています今井裕平です。デザイン会社といっても少し変わっていて、中小ものづくり企業を中心に、製品のデザインだけでなく、「どうすればもうかるか」「新たな事業の柱になるか」をゴールに事業全体をデザインしています(周りからは「ビジネスデザイナー」と呼ばれています)。投資判断や収支計画策定のサポートをしたり、広報や販路開拓を担ったり、事業が成功するためにできることは何でもやっています。

 この連載では、我々の取り組みの中から生まれた文具「wemo―― ウエアラブルメモ」の構想から開発、ヒットに至るまでの一部始終を日記スタイルで公開したいと思います。

現場最前線のワーカーをターゲットにしたシリコンバンド型のウェアラブルメモ (C)kenma Inc.
現場最前線のワーカーをターゲットにしたシリコンバンド型のウェアラブルメモ (C)kenma Inc.
油性ボールペンで書いて、消しゴムで消すことができる (C)kenma Inc.
油性ボールペンで書いて、消しゴムで消すことができる (C)kenma Inc.

 なぜ公開したいと思ったのか。その理由は、「wemoの一連の試行錯誤」が読者の方々にシェアするに値する「レアなコンテンツ」だと考えているからです。中小企業とデザイナーのマッチング機会は年々増えているように感じますが、事業として成功しているケースはまれです。この状況のなか、wemoはそのメーカーにとってBtoC領域への初チャレンジであるうえに、マーケティング予算も限られているにもかかわらず、発売初年度から目標販売本数の10倍、10万本の販売を達成しました。

 2018年で7年目となる「東京ビジネスデザインアワード」(詳細後述、以下TBDA)の中でも、初年度の売り上げ記録を大幅に更新し、桁違いの成果を生み出した珍しいケースとして評価されています。それ以外にも下記のような実績があります。

  • 発売4カ月でブレークイーブン(損益分岐点)クリア
  • アワード4冠(日本文具大賞優秀賞、グッドデザイン賞、Dezeen Awards Shortlist選出、TBDAアワード優秀賞)
  • テレビ放映12番組
  • 海外からの問い合わせ20カ国、地域以上

 さらに「レア」なのは、その事業開発のプロセスの全貌を公開する点です。wemoを製造・販売するコスモテックの多大なご理解、趣旨へのご賛同があり、通常できないことが実現しました。近年、ビジネスデザイン関連の記事を目にすることも多くなりましたが、取り上げられる事例に限りがあり、抽象的な内容にとどまる傾向にあるように感じています。そのため、本連載ではできるだけ具体的にお話ししていきたいと思っています。