2018年4月1日は広告業界にとって歴史的な1日となった。テレビCMの取引指標が、初めて変わったのだ。テレビCMは今、岐路に立たされている。得られるデータの少なさに広告主の不満が噴出。2年前の時点でさえ、出稿停止の意向を示す大手広告主が3割超に上った。危機感を覚えた業界は効果指標の革新へと向かい始めている。その動向を全5回で探る。

(c)Shutterstock

 「日本アドバタイザーズ協会(東京・中央、JAA)の電波委員長時代に、大手企業の宣伝部長クラスから『テレビCMをやめてはどうかと社長に言われた』という相談が相次いだことがある」

 トヨタマーケティングジャパン取締役、JAAの電波委員長などを歴任してきたデルフィス(東京・千代田)の土橋代幸常務はこう明かす。16年秋のことだ。異変を敏感に感じ取った土橋氏は急きょ、JAAに加盟する企業の宣伝部長クラスにテレビCMに関するアンケートを実施した。すると、103社中37社から「社内でテレビ媒体の利用をやめてみてはどうかという意見が挙がったことがある」との回答が寄せられた。

 衝撃だった。だが、よくよく考えてみれば「最も予算を投じている広告宣伝手法の中でも、一番ブラックボックスになっているのがテレビ」(土橋氏)とも言えた。説明のつかない金を投じているように見えるのもうなずける。さらに「現在と比べ5年後のテレビ媒体への出稿比率はどのように変化していると考えるか」という質問には「やや減っている」が45.6%、「大幅に減っている」は13.6%、合計で59.2%の広告主がテレビの出稿を減らす意向を示した。

「現在と比べ5年後のテレビ媒体への出稿比率はどのように変化していると考えるか」と尋ねたところ、約6割の広告主は5年後にテレビCMの出稿量を減らしていると予測する

 時代の変化も大きい。最たる例がデジタルマーケティングの普及だ。デジタルマーケティングではさまざまなデータが取得できるため、その効果を可視化しやすい。CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、CPC(クリック単価)、CPA(顧客獲得単価)といった基本的な指標はこれまでも重宝されてきた。より透明性を高めるための指標も次々と誕生している。動画視聴完了率、キャンペーンページの読了率などはここ数年で開発された新たな指標だ。昨今、アドフラウド(広告詐欺)が話題を集めるなど、ネット広告にも問題は山積みだが、それでも効果測定に必要なデータの提供や解析技術はテレビのずっと先をゆく。

 デジタルマーケティングでは広告を届ける層の絞り込みにも豊富なデータが用いられる。年齢、性別、年収といったデモグラフィックデータの他、旅行好き、自動車の保有者といったサイコグラフィックデータを活用して、自社の製品やサービスに合致した層にだけ効率よく広告を配信できる。リアルタイムでデータを把握して、クリエイティブも必要に応じて差し替えできる。この仕組みと広告効果指標を組み合わせることで、精緻に分析しながらPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回せる。それがデジタルマーケティングの利点だ。